【現代音楽シリーズ】折口信夫「死者の書」あらすじと解説
折口信夫による小説「死者の書」をもとにした、今回の委嘱作「舞台アート音楽作品『GAGAKU I II』」。 折口信夫『死者の書』 【成立】 ・『死者の書』は1939年(昭和14年)、雑誌「日本評論」の1、2、3月号に、それぞれ『死者の書』『死者の書(正篇)』『死者の書(終篇)』と題して3回にわたり連載された。 【内容(あらすじ)】 ※物語の中心にあるのは、当麻寺に入って出家し、阿弥陀仏の助けを借りて 蓮糸の曼陀羅を織り上げ、現身のまま成仏したという、中将姫伝説。この中将姫にあたるのが、主人公となる藤原南家郎女(横佩家の郎女)。 冒頭、二上山山頂に眠る死者が目覚めるところから物語は始まる。 墓の外で「こう こう こう」と魂乞いをする声が響いている。 麓の山田寺には郎女がいる。 その話とは、 郎女は、自分を招く人の俤をすでに見ているが、その人が大津皇子とは思えない。 大津皇子は、この老婆の語りに、遠く墓の中から耳を傾けていた。 <<<ここで物語は、郎女が一人藤原京の館を出たところに戻る>>> 当時、権力の中枢にいた藤原氏だが、藤原南家当主・豊成(郎女の父)を押しのけ、その弟・仲麻呂の威勢が高まっていった。 郎女は、広嗣の乱の巻き添えとなり太宰府に左遷させられた父から送られてきた、阿弥陀経の写経を始めた。 郎女は、ちょうど写経が九百九十九部まできたところで、遠く二上山に自分を差し招く人の姿を見る。時は春分の日であった。 <<<ここで大伴家持が登場。家持の視点から当時の藤原京の様子を描写>>> 山田寺では、女人結界を破った郎女の処遇を巡り南家と寺側が対立するが、郎女自身の「姫の咎は、姫が贖ふ」という言葉によって、寺に留まることになる。 庵に暮らす郎女の下に、近付いてくる跫音がある。 季節は春から夏へ移り、郎女の周囲では、蓮の糸縒りが始まる。 郎女は「はやうあの素肌のお身を、掩うてあげたい」と機を織り始める。 そうして秋が深まったころ、五反の布が織り上がった。 (解説:内野浩介) 「死者の書」の世界には、歴史の流れに刻まれた人々の思いや、古来から日本人の心に蓄積され脈々と流れるものが詰まっています。 現代日本の音楽、文化芸術にとって新しい試みとなる作品です。 【2008/10/15】 |