【現代音楽シリーズ】こちらも見逃せません!
 ~柴田南雄、西村朗 その魅力
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来る26日の現代音楽シリーズでは、千原氏による新しい舞台芸術の世界が話題になっていますが、もちろん、それだけではありません!

今週は、柴田南雄、西村朗両氏の作品の魅力をご紹介します。


**男声合唱と小鼓のための「美女打見れば」(「梁塵秘抄」より)

平安時代末期に院政を敷いたことで有名な後白河法皇は、当時の流行歌であった「今様」を大変好み、あまりに歌いすぎて3度も喉を壊したといいます。その法皇が今様を後世に残すために編纂した「梁塵秘抄」がこの曲のテキストとなっています。

6曲からなる「美女打見れば」には、そのタイトルのとおり若い男性が美女を見たときの男心を歌ったものや、当時流行したファッションについての歌、またかたつむりに「角出せ角出せ、でないと…」と迫る童心の歌など、今の私たちから見てもとても共感しやすい歌が多く用いられています。
また、「梁塵秘抄」による柴田南雄の曲は他に女声・混声合唱が1曲ずつあるのですが、唯一の男声合唱であるこの曲では、男性らしさが強く出ているのも特徴と言えるでしょう。

現代に生きる私たちは古典の言葉にはすっかり疎くなってしまいましたが、当時に生きた人々も私たちと変わらない気持ちを持っていたことを実感できるのは、古典の大きな魅力ではないでしょうか。

西洋音楽とは違う独特の響きを持ちながら、かといって伝統的邦楽と同じでもなく、日本の新しい音楽を生み出している「柴田サウンド」。
私たちの国の音楽の未来に向かって何かを指し示している、そんな柴田南雄の音楽と古典テキストとの巡り合わせは、私たちの歴史が過去から未来へと連なっていることを再認識させてくれます。


**無伴奏女声合唱組曲「浮舟」~源氏物語の和歌による~

先月の京都公演で演奏しました「寂光哀歌」の姉妹作品。源氏物語の「宇治十帖」をモチーフとしています。対照的な性格の二人の貴公子から愛され、苦しむ姫君、浮舟・・・

曲は、1.匂宮 2.薫 3.浮舟 の3曲。
原文に用いられている和歌のみがテキストです。1、2曲目はそれぞれ、匂宮と浮舟、薫と浮舟のやり取りした和歌、3曲目は死を決意した浮舟の和歌のみで構成されています。
1曲目は、情熱的な愛と苦しみを、2曲目は端正な音楽の流れにのせて、抑えられた心情を、終曲は、死にのぞむ浮舟の絶唱を、西村作品独特の、凝縮された緊張感、印象的なヴォカリーズで表され、たゆたう心の危うさが胸に切なく迫ります。


シュッツ合唱団でしか聴けない、男声合唱、女声合唱の響き、どちらも見逃せません!ぜひ、ご期待下さい!


(2008.10.17 コレ・マガ第358号より転載)

【2008/10/17】