邦人合唱曲シリーズへのお誘い ~柴田南雄「三つの無伴奏混声合唱曲」
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北原白秋の詩集「海豹と雲」から『水上』『早春』、および「水墨集」から『風』の3つの詩による珠玉の無伴奏混声合唱曲。

「水上」
   山深く、木々の枝々の間から木漏れ日のさす中、
   苔の間から湧き出る清冽な清水を思う。その神聖さ。

「早春」(アルト独唱付き)
   春浅いある日、木の梢に青鷺の巣を見、ふと転じて目をやると
   日に暈がかかっていたのがいつか往き消えていた。

「風」
   彼方から風が吹きわたってくる。遠くから次第に近づいてくる。
   やがて私自身も風に揺られはじめて…。
   空を翔る鳥、そよぐ尾花、あたりは折ふし光り、また暗む。
   透き通る秋の情景。

四季折々の清冽な情景に心つき動かされ、白秋の選んだ繊細な言葉の数々。
それらへの郷愁、そしてどこまでも透き通るような遥けさを、ただシンプルなホモフォニーに表現する柴田の深い洞察と優しいまなざし。

この作品は1948年に発表されましたが(!)歌うたび私たちの心の根底に浮かび上がるその情景は、揺るぎなく時代を超えた普遍的な風景であり、故にこの曲もまた古今の「名曲」と言えるのではないでしょうか。

【2009/09/25】