邦人合唱曲シリーズへのお誘い ~柴田南雄「三つの無伴奏混声合唱曲」 メールマガジン□■コレ・マガ■□掲載記事より
北原白秋の詩集「海豹と雲」から『水上』『早春』、および「水墨集」から『風』の3つの詩による珠玉の無伴奏混声合唱曲。
「水上」
山深く、木々の枝々の間から木漏れ日のさす中、
苔の間から湧き出る清冽な清水を思う。その神聖さ。
「早春」(アルト独唱付き)
春浅いある日、木の梢に青鷺の巣を見、ふと転じて目をやると
日に暈がかかっていたのがいつか往き消えていた。
「風」
彼方から風が吹きわたってくる。遠くから次第に近づいてくる。
やがて私自身も風に揺られはじめて…。
空を翔る鳥、そよぐ尾花、あたりは折ふし光り、また暗む。
透き通る秋の情景。
四季折々の清冽な情景に心つき動かされ、白秋の選んだ繊細な言葉の数々。
それらへの郷愁、そしてどこまでも透き通るような遥けさを、ただシンプルなホモフォニーに表現する柴田の深い洞察と優しいまなざし。
この作品は1948年に発表されましたが(!)歌うたび私たちの心の根底に浮かび上がるその情景は、揺るぎなく時代を超えた普遍的な風景であり、故にこの曲もまた古今の「名曲」と言えるのではないでしょうか。
【2009/09/25】
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