上田真樹「夢の意味」


いよいよ来週23日(木祝)に迫りました京都公演では、上田真樹氏の「混声合唱とピアノのための組曲 夢の意味」を演奏いたします。

この作品は、2007年東京混声合唱団により、新進気鋭の作曲家たちに「22世紀への贈り物」というテーマで委嘱、初演された作品の中のひとつです。

作曲にあたって上田真樹氏は、敬愛する林望氏に作詩を依頼し、この作品のために5篇の詩が書き下ろされました。

林望氏は「この5篇の詩は、みんなそれぞれに違うベクトルを持たせてわざとバラバラに書いた」と述べています。

●朝あけに
 幼い頃に母の懐に抱かれ、そのぬくもりの中でいつの間か知らず眠ってしまって見た夢の追憶。
●川沿いの道にて
 大人になっていく過程の生の追憶。
●歩いて
 人は自分の人生は自分の生き方でしか生きられない。一度しかない人生をただひたすら歩み来て、ふと振り返って見たときに、「もう一度やり直しても同じ生き方になっただろう」と思う。
●夢の意味
 「いきていることの/いみを だれもほんとうには/しらない。」
 死んだときに目が覚めて現世はほんの夢のようなものであったということに気付くのかもしれない。
●夢の名残
 人生を経めぐった後の無常感。その夢の名残。

これらの5篇の詩が「ゆめのような/うつつのような」というくだりに収斂される様が、ゆっくりと呼吸するような、美しく自然な旋律とハーモニーで、まさに夢見るように描き出されています。
その至福の美にたゆたいながら、夢とは何か、生きることとは何か、を考えさせられます。


―□■コレ・マガ■□ 第454号(2010.9.17発行)より転載

【2010/09/19】