髙田三郎「ヨハネによる福音」


作曲家・髙田三郎氏(1913-2000)は愛知県名古屋市に生を受けました。
現・武蔵野音大および東京芸大の作曲科等を経て、初めは管弦楽曲の作曲を精力的に発表していましたが、次第に合唱曲に重きを置くようになりました。

それまでキリスト教界ではミサはラテン語により行われる事が定められていましたが、名高い「第2バチカン公会議(1962年~1965年)」で成立した典礼憲章に基づき、以降各国語でミサを行うことが認められるようになりました。それにともない、日本カトリック司教団は彼に典礼聖歌の作曲を依頼しました。

最初の頃、西欧のグレゴリオ聖歌の節回しやムードに慣れ親しんでいた人々は彼の作る耳慣れないメロディに反発感を示したと言います。しかしこれこそ、日本語にしかないある種独特のニュアンスに着目し、それを音化した彼の功績と言えるでしょう。

彼は、その示すところが全てではないにしろ確かに日本語の音(オン)を音楽としていかに表現するかにおいて、あるはっきりとした一つの方向性、在り方を示唆した最初の作曲家だったと言えるのではないでしょうか。

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今回京都公演にて演奏する「ヨハネによる福音」は、ご承知の通り新約聖書のヨハネ福音書からそのテキストを採っています。

1.初めにみことばがあった(1章1-14節)
2.一粒の麦が地に落ちて(12章24-26節)
3.父よ、時が来ました(17章1,4-6,8,9,17-21,23節)

これらあまりにも有名な語句また内容について、ここで何かをお伝えするということは僭越に過ぎることかも知れません。一つ言えることは、聖書(=神のことば)の内容を髙田三郎が何一つ間違う事なく音として表現しようと渾身の力、精神力をこめて作曲したに違いない、ということです。

彼の日本語世界に、満を持して当間とシュッツ室内合唱団が対峙します。


―□■コレ・マガ■□ 第454号(2010.9.17発行)より転載

【2010/09/19】