1997/10/25
<シューベルトの演奏会を終えて>

(今回の担当:TEN 若山良雄)

「シューベルト/ミサ曲第6番ほか」の演奏会が成功のうちに終了しました!
まずはじめに、聴きに来ていただいたたくさんのお客様、 そしてこの演奏会を企画、主催し、 私たちにこのような名曲を演奏する機会を与えていただいた いずみホールの方々に心より感謝したいと思います。

いままであまり演奏したことのなかったこの時代の作品に取り組んで、 最初のうちは多少とまどいもありましたが、しばらくするとその魅力にとりつかれ、 最後の数日でやっと自分たちのものになってきたかな、 というタイミングでの演奏会でした。

第1部の小品集の「流浪の民」や「おおひばり」などの曲は、 団員の多くが中学・高校時代から音楽の授業やクラブなどで慣れ親しみ、 日本語でなら歌ったことのあるものでしたが、 いざ原語で歌うとなると、これがなかなか難しくて思ったように口がついてゆかない。 しゃべることに気がいってしまうと、内容に踏み込めず、結局音楽的に歌えない。 「これは覚えるしかない」という先生のおことばもあり、 練習場のみならず、行き帰りの電車の中などで、 少しの暇を見つけては楽譜とにらめっこ、という光景をよく目にすることがありました。
ゲネの前には先生から、 ただ一曲、ブラームスの「秋に」では絶対に体を揺らして歌ってはいけない、 という指示が出ていました。これはこの曲の持つ「厳粛さ」を表現するためだったのですが、 誰とはいいませんが、いつものくせで、つい体が動いてしまい、 後ろから両手で動きを止められていた人もいましたね。
ゲネが終わったあとには、全体についての先生のお話(後述)のあと、 第1部の小品集の演奏についてコーア・マスターを中心に作戦会議が開かれました。
どの曲もみな同じような表現、同じような声で歌うのはおかしい、 一曲一曲を歌い出す前にその曲のイメージや情景をしっかりと頭にめぐらせてから 歌いましょう、というものでした。
これらのさまざまな取り組みによって、本番では一曲一曲がそれぞれ味わいの違う、 すてきな「一品」として演奏できたのではないかと思うのですが、いかがでしたでしょうか?
(女声陣の演奏は、練習やゲネでも出ていなかった最上のものが出ていたと思います。
 わが女声の底力にあらためて感服しました。)

シューベルトのミサは個人的には大学の合唱団でその一部を歌ったことがあるのですが、 今回改めて全曲を演奏してみて、その内容の深さに目を開かれる思いでした。 以前には気付かなかったシューベルトの熱い思いがそのメロディーを通じて、 びんびんと身体全体に伝わってくるようでした。 特に全体を通じて何度か出てくる「Agnus Dei」の歌詞につけられた音楽は激しく、 また「miserere」は切実に、そして「Dona nobis pacem」では深い祈りが感じられ、 まるでシューベルト自身が私の身体を借りて歌っているかのような感覚さえ覚えました。

ゲネのあとでの「全員が精一杯の声を出してほしい」との先生の願いが通じたのか、 本番ではわがテノールも少人数ながらもまさに「張り裂けんばかり」の声を出して、 この世界に入っていけていたと思います。 特に「cum sancto」や「et vitam」のフーガでは楽器群に支えられながら、 パートとしての線をいくらかは出すことができたのではないかと思っています。

最後にアンコール曲、ブラームスの「別れの歌」を歌い終えると、 聴きに来ていただいたお客様からあたたかい拍手をいただき、 私たちは心地よい疲れとともにこの演奏会を終えることができました。 (合唱団の退場の際にもあらためて拍手をいただき、感激!でした)

さて、でものんびり休んではいられません。
この日曜日にも演奏会があり、私たちは休むひまなく今日も練習です。
これから年末までノンストップで走り続けたいと思います。


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