1998/9/23
<邦人演奏会を終えて>

(今回の担当:BASS.坪沼雪人)

こんにちは、新入団員の坪沼酒造こと、坪沼雪人です。
6月に入団して早4カ月が経とうとしていますが、私の人生の中でとても密度の高い 毎日を過ごしている感じがするせいか、長かった気がします。
入団する前からみんなすごく楽しそうに「音楽」しているな氓ニ思っていましたが、
内側から見ても、勿論そうだし、それだけではなく更に高める為に日々努力している姿に驚かされ、負けられないと思い、まるで高校生に戻った様な感覚になりました。
私は高校から音楽科でしたので、一応専攻が何であれ、ピアノや声楽、ソルフェージュの試験があり、いやでも練習しなければなりませんでした。
私の専攻はヴァイオリンでしたが、あまり声を出す機会もなければ、恥ずかしい事とさえ思っていたので、合唱の授業などは憂鬱でした。
そんな時にベースパートの私の隣で歌っていた声楽専攻の先輩の歌いっぷりは、声楽的発声というものを初めて目の当たりにした私にとって、こちらの方が恥ずかしくなる位ショッキングな事でした。とにかく声が大きい(当時の印象)です。
私はためらわず真似してみました。そしてある日突然自分でもびっくりする大きな声が出るようになりました。なんでもそうですが、人は他の人よりも、もしかしたら自分の方が勝れているかもしれない事を発見したり自覚したりするとその事が楽しくて、更に発展させたくなったりするものです。
♪「私が歌う理由(わけ)」♪を延々と書いてしまいましたが、私と話をした事のない人に、どんな奴が書いているのか知っていただきたいのでお許しを。

もう一つ、私が入団してすごく感動したのは当間先生の練習の度に話される言葉です。
私は完璧な人間など存在しないと思っていますが、そうなれないまでも、一つの事を極めようとする時に最終的に目標にするのは「完璧さ」だと思うし、それに向かって努力していくうちにある方向に偏ってしまったりする事や時期があるかもしれません。
様々な人生を生きている様々な仕事を持った人達が、一つの「音楽」を創ろうと放つエネルギーを集束しているのは、先生の棒だけではないという事が、この団を創り出す「音楽」がよりまとまったものになっている所以だと思うし、そういう団のありかた、音楽に対する取り組み方等、「もしかして、すっげー最先端いってるかも」と思いはじめた今日この頃です。
入団して2カ月足らずで同行させてもらったドイツ演奏旅行が初舞台で、滅多に出来ない経験や勉強を皆さんと一緒にさせていただいた事は私の人生にとって大きな糧となっていくと思いますが、私は個人的にこれからが勝負だと思っています。
「感動」する事に対して冷めてしまっている現代社会(少なくとも私にはそう見える)で 特に日本人は大勢に流されやすく大衆化し易いと思うのですが、やはりそういう環境が悪いと思うのではなく、だからこそそういう日本人に「感動」する事の大切さや快感を思い出させなければと思います。ホールの響きしかり、起きてこちらに感心を持ってくれている人を感動させるより、寝ている人を起こして感動させ涙まで流させるには相当なエネルギーが入りますが それができたら、どんな人でも「感動」させられると思うし、私も「感動」できるし、燃えま す。

<邦人演奏会を終えて>というタイトルなので、演奏した曲の感想を書けば良かったのでしょうが、インターネットもデビューなので、私は私なりに入団してから今までの間に思った事や感じた事を書いてみました。まだまだ書き足りない事はたくさんありますが、またの機会にしたいと思います。

私は長い間楽器をやってきましたが、やはり一番ストレートに心の中に入ってくる音は
人間である限り、声であり「うた」だと思っています。
私は相当しばらくの間死にませんが、それまでの間に出来るだけ沢山の「うた」を
私の「骨のみみ」に響かせられる様に皆さんと歌っていきたいと思います。


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