1998/12/20
<「クリスマスコンサート」を終えて>

(今回の担当:Alt.広瀬あゆみ)

「ああ、客席でこのコンサートを聴きたいなあ。」

私がクリスマスコンサートの練習をしながら思っていたことは
これでした。
特に、一番最初に演奏する、モンテベルディの「マニフィカート」。
会場を6声がぐるーりと取り囲んで歌うのです。
ステージの上、2階左右のバルコニー、パイプオルガンの両端。
ゲネで聴いたときは、それこそ天上から声が降ってくると言う 感じで、
涙が出そうになりました。

え?ゲネや練習で聴けるからいいだろう、って?

そりゃ違いますよ〜。確かに練習やゲネでも素晴らしいんですが やっぱり、本番のあの雰囲気で、カンマーコーアの人たちが本気で 歌った歌を、聴きたいじゃありませんか!!
「前半は出番がないんだし、前半は客席で聴いたら駄目ですかね〜。
 休憩の時に急いで着替えますから・・・。」
と、かなり本気で呟いてもみたんですが、一蹴されてしまいました。

シュッツ合唱団に入っていて良いことは、最高の歌声を、
ほとんど毎日のように聴けること。
そして、悪いことは・・・・。コンサートを客席で聴けないこと。
これにつきます。
ああ、体が二つあったら良いのに。合唱団員のみなさん、絶対 そう思ったことありますよね?

さて、本番の感想です。私は後半の賛美歌など数曲しか 歌わなかったのですが、
それでも、そこはシュッツの舞台。
ゲネで当間先生のおっしゃった、
「普通(の歌声)じゃあかんねん。」
「自分のために歌うんじゃなく、お客さんのために歌うんや。」
という言葉が頭の中にぐるんぐるんとエコーしています。
私は歌うとなると緊張して、もう自分の許容量が目一杯に なってしまうんです。
回りのことは何も見えなくなり、 それこそ目の前の楽譜と、先生の顔しか見えなくなります。
自分が歌うことで精一杯。
でも、それだと、「はい、お上手に歌えましたね。」っていう結果にしか なりません。
お上手にさえ歌えない場合は、それじゃ目も当てられませんよね。

「上手には歌えないかもしれないけど、せめて笑顔で、お客さんを  見ながら歌おう。」

ゲネをしながら、私は、自分の楽譜に『ニコちゃんマーク』と
『笑顔!』という文字を書き入れました。
ここに書いておけば、本番で頭が真っ白でも、目に入るだろう。
必死にニコちゃんマークを書き入れる私を見て、隣の五十嵐さんが
そのニコちゃんマークの横に楽しそうな八分音符を書き入れてくれました。
「おお、百人力!」
その効果があったのか、本番ではかなりの笑顔で歌うことが
出来ました。楽譜にニコちゃんマーク。かなりオススメです。

アンコールのバッハのカンタータ「147番」を歌っている間、客席のご婦人が、しきりに頷いて いらっしゃるのが目に入りました。

  ああ、私たちの歌声が客席に届いているんだ。

そんな当たり前のことを、今更のように感じながら、
「自分のためじゃなく、お客さんのために歌う。」
と言うことの意味を、しみじみと噛みしめておりました。

入団してから、これまでに沢山の舞台に乗せていただいて
ますが、本当に毎回毎回、新しい発見があるもんだ。
そう感動しながら、1週間後の「ミサ・ソレムニス」のコンサートでは
どんな発見があるのか、楽しみにしながらも、 ちょっと恐れおののいている広瀬でした。


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