2000/7/24
<「邦人合唱曲シリーズ Vol.6」を終えて>

(今回の担当:TEN.鳥海治房)

「邦人合唱曲シリーズ Vol.6」が終わりました。
「演奏会のトリを飾るにふさわしい曲ばかり!」(倉橋先生談)の、凄い演奏会でし た。

一曲目は、千原英喜作曲の「志都歌」、女声合唱です。男声は楽屋待機だったので、 本番に関しては何も書けないのですが、ゲネでのことを、少し。
例によって、最良の響きのために、いろいろと立ち位置を試していましたが、その中 で、ちょっと変わった響きを聴く機会がありました。メロディパートと、「さやさや」 と歌うパートの、声の方向が違って聴こえてくる。メロディはまっすぐ聴こえてくる のに、「さやさや」は上から聴こえてくる、という聴こえ方です。高声部(中声部) が低いメロディを歌っている箇所で起こった現象でしたが、これはこれで面白い響き でした。最終的には、声部全体が上から広がってまとまって聴こえるような立ち位置 となりましたが、こうして、いろいろな響きを聴くことができるのは、ゲネの楽しみ の一つです。もちろん、最終的に選んだ配置こそ、曲全体がきれいに聴こえて、この 曲独特のエネルギーが伝わってきやすい配置でした。

二曲目は、荻久保和明作曲の「縄文」。実は、僕は、この曲を歌いたい、と提案した ものの一人です。そんな僕が、「縄文」の全練習を通して、一番大きな”変化”を感 じたのは、前日の練習でした。前日の練習で歌っているときには、
「おお!昨日までと全然違う!ようやく、歌い手全員が、この曲に引き込まれて、ひ とつになったんだ!」
という確かな手応えがありました。しかし、ゲネでは、そんな強烈な感覚はなく、ゲ ネを聴いていた人からも、「洗練はされたが迫力は減った」というような指摘があり ました。
本番の演奏では、始めて感じたクリアーな響き、というものが何カ所かありましたが、 さて、”勢い”は?それについては、正直言って、よくわかりませんでした。少なく とも、前日感じたような大きな”変化”(成長、という表現の方がいいかもしれませ ん)は、感じられませんでした。これは、前日の好状態を維持できた、という意味な のか、それとも、前日よりも悪かった、ということを意味しているのか・・・。また、 お客様の拍手が思ったよりもおとなしかったのは、迫力が足りなかったということな のだろうか、それとも、曲に圧倒されて手もたたけなかったのだろうか・・・、と、 不安も残りましたが、後でアンケートを読んだところ、「縄文」は、かなり好評だっ たようです。ホッとしました。

休憩を経て、三曲目。木下牧子作曲の「エレジア」です。これは、文句なしに、本番 が一番楽しめました。ホールで歌うようになって、ようやく、全員で繊細さが表現で きるようになり、この曲独特の、キラキラした色ガラスの世界(明るい”キラキラ” から、ぼやけた”キラキラ”まで、ホントに様々な色の世界!)が見えるようになり ました。お客様の反応も、明らかに良かったようで、演奏直後の拍手が、とても気持 ち良かったです。

四曲目は、木下牧子作曲の「光る刻」。これは、全員での演奏です(上の3曲は室内 メンバーによる演奏でした)。今にして思えば、この曲は、歌い込まないと良さがわ からない曲であったようです。僕は歌い込みが足りず、数日前になってようやく、楽 しめるようになった状態(お恥ずかしい・・・)。これも、本番が一番楽しかった! わかりやすい和音や馴染みやすいメロディの中に、けっこう深いテーマの練り込まれ た曲です。演奏会の最後を飾るにふさわしい(?)盛り上がりで終わる曲です。こう いう曲は、何曲か歌った後で歌ってこそ、いっそう楽しい。もちろん、その分、演奏 後に訪れる”疲れ”も相当なものとなりましたが。

そして、アンコールは、「夢見たものは」と「鴎」。どちらも、大好きな曲ですが、 特に「鴎」。始めてこの曲を聴いたのは、アウローラ・ムジカーレの演奏会だったの ですが、その際、タイトルの「鴎」が読めなかったにもかかわらず、理屈抜きに気に 入った、という曲です(・・・うーん、何だか変な説明ですね)。
倉敷音楽祭でも、アンコールとして歌った2曲ですが、もう一度歌えて、本当に良かっ た!同様の想いの団員は、僕以外にもたくさんいたと思います。みんな、喜びいっぱ いの表情で歌っていたことでしょう。

で、こんな演奏会が終わって。
さあ、今度は、9月のバッハです!
実は、一ヶ月半くらいしかありません。
でも、少しの間、余韻に浸ってノンビリしていたいです・・・。


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