2002/10/21
<躍動する音楽! ベートーヴェンの喜び 〜ベートーヴェン・シリーズを終えて〜>

(今回の担当:Alt. 安藤朋子)

ベートーヴェン・シリーズの演奏会は、合唱団員にとってスペシャルな楽しみがあります。聴く楽しみです。ベートーヴェンを演奏する喜びと、聴く喜びが、一日のうちに味わえるのです。

また、私には演奏会に先立ちもう一つ、ありました。これを機会としてベートーヴェンを知る楽しみです。ベートーヴェンに関する本を読んだり、今まで読んだ本の中からベートーヴェンに関連する記述を拾ったり、家にあるCDやテープを聴いたりしました。
最初は、演奏する曲の理解を深めるとか、曲の魅力を語ってお客様勧誘につなげるとか、利を考えなかったわけでもないけれど、結局は色々知る事が面白い。
そして合唱団のメーリングリスト上で、私が面白いなあと思った事を書き、また別の人のしてくれる話を読んで面白がったりもします。専門家ではないので「研究」や「勉強」ではありませんよ。面白い出来事を人に聞かせたくなるのと同じです。

本番近くなると、オケ合せが何度かあります。早めに練習場に行くと交響曲のリハーサルが聴ける特典付き。スコアを手に聴いている合唱団員もいます。会場の響きが良くなかったり、最初は時々息が合っていなかったり(オケの皆様、ごめんなさい)していても、当間先生の目指す音楽の方向は、否応なく伝わってきます。「本番、どうなっちゃうんだろうね」というのが合言葉のようでした。
その後に、合唱団のオケ合せです。時間的に言うと、かなり待ってから歌うのですが、皆「待たされた」という気持ちはないでしょう。(ただ、聴いている間に体やノドが冷えるので、立ち上がりを良くするのが今後の私の課題か。)

そして本番の日。曲順が、交響曲第2番、合唱曲、休憩を挟んで交響曲第7番だったので、私たちは、残念ながら客席で2番を聴く事ができません。

2番が始まり、上手袖でスタンバイしながら漏れ聴いていました。しかし、袖からステージを覗ける小窓(去年小野さんが涙した場所ですね。前話参照)のところには、最初からほぼ最後までずっとソプラノのK嵜さんが張り付いていて、私はあまり覗けませんでした。
ソプラノは下手側でスタンバイよ、いいの?K嵜さん!(笑)
でも、張り付く気持ちは、よーく分かります。

本番に先立つ事数時間前、2つの交響曲のゲネプロを、合唱団員は多く聴く事ができて、嬉しくはあったのです。作業の都合などであまり聴けない場合もありますから。が、ゲネプロと本番両方聴く事のできた7番から類推すると、2番の本番も、きっとゲネプロの比ではなかっただろうと想像するばかりです。聴けたお客様が羨ましい。日頃「ゲネプロにも手を抜いてはいけない、全力でやりなさい」と団員に説く当間先生ですから、ゲネプロも力を尽くしているのは疑いありません。でもそこからまだ先に行くのは、本番の魔力なのでしょうか。

2番の後、合唱の出番も終わり、さて「聴衆」の時間到来。急いで着替え、いそいそと席に着き、7番です。

それは、緊張感や、情熱や、生命の活気に満ち満ちた、あっという間の時間でした。終わった後の拍手が、それを物語っていました。私自身も一所懸命拍手をしながら、手をたたく位置が高い人が多いなと、つい観察してしまいました。演奏の後、客席には、言葉にはできない同じ気持ちが流れているのを感じました。
当間先生は、シャイなのでしょうか、日頃は演奏後、割とすぐに帰ってしまう事が多いように思うのですが、この日は熱い拍手に応えて何度も舞台に戻ってきましたし、拍手は奏者が全て帰るまで止みませんでした。

後で、私が「sempre accel.(常に速度を上げる)だったね。」と、ベースのSくんに言うと、「それは、ないだろう。」と意外に冷静に返されてしまいました。確かに、考えたら現実には無理に決まっていますね。でも、7番の4楽章はそんな印象でした。速度が速いといっても、浮き足立つような不安定なものではなくて。
私はふと”Laufet,Brueder,eure Bahn”(進め、兄弟たちよ、汝らの道を/第九の歌詞より)という一節を思い起こしました。力強く安定したものと、活気が同時にある音楽だったと思います。

ベートーヴェン・シリーズは、本当にワクワクする演奏会です。交響曲だけではなく、あれも聴きたい、これも聴きたいと、勢いに乗って当間先生には無茶なリクエストをしてしまいました。次回は、どんなベートーヴェンが聴けるのでしょうか。今から、来年のベートーヴェン・シリーズが楽しみです。


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