2003/9/22
<イーハトーヴ 〜ドリームランドとしての日本岩手県〜>

(今回の担当:コレ・マガ編集委員 Alt. 中橋陽子)

宮澤賢治は全世界共通の言葉として「エスペラント語」を学んでいました。
全世界の平和と幸せを祈ってのことでした。その賢治の愛した「岩手県」をエスペラント語で「イーハトーヴ」と呼ぶのだそうです。

賢治には数々の著作がありますが、生前に刊行されたのは、詩集「春と修羅」と「イーハトヴ童話:注文の多い料理店」の2冊のみです。
当時売れ行きの芳しくなかった後者の宣伝のための広告チラシに、賢治は次のような文を寄せました。

「イーハトヴは一つの地名である。(中略)・・・実にこれは著者の心象中に、このような情景をもつて実在したドリームランドとしての日本岩手県である。そこではあらゆる事が可能である。人は一瞬にして氷雲の上に飛躍し大循環の風を従へて北に旅することもあれば、赤い花杯の下を行く蟻と語ることもできる。罪や、かなしみでさへそこでは聖(きよ)くきれいにかゞやいてゐる。」

混声合唱のための「高原・イーハトーヴ」は、そんな賢治の理想郷・ドリームランドをイメージして、作曲家の鈴木憲夫さんが自らいくつかのテキストをコラージュして作られた作品です。

今も宮城・岩手両県(北上地方)に伝わる「鹿(しし)踊り」が、美しい岩手山を背景に繰り広げられる。(「高原」より)
夜空にはあかいめだまのさそり、ひろげた鷲のつばさ(「星めぐりの歌」より)
ここはひとりの詩人の心のなかに映し出されたドリームランド(前述広告より)

当間もHPの日記の中で
「『違う』、と本人に言われるかも知れませんが、喋らなくても作品を通して憲夫さんの『想いは』十分に解っていると思う私です」と語っていますが、団員ひとりひとりがまたそれを感じとり、自らも心を熱くして曲に臨むことができるのです。

永訣の朝、祈祷天頌などすでにCD化された鈴木作品はもちろんですが、この珠玉のアカペラ作品にもファンは多いのではないでしょうか。ぜひシュッツ室内合唱団の語るイーハトーヴを体験しに、9月27日は京都へお出かけ下さい!

(「大阪コレギウム・ムジクム メールマガジンNO.103 2003.9.12発行」より転載致しました)


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