No.574 '04/11/12

嬉しい便り


私たちの合唱団メーリングリストに以下のような便りが流れました。
新潟、中越地方の災害に心が痛む中、この便りに少し、ほっとする安堵の気持を持つことができました。

「新潟の中越地震があった1週間後の週末、被害のひどかった長岡に行ってきました。
その際、精神科医の友人と一緒だったのですが、その友人曰く、「子どもがしゃべらない」と云って困っていました。
ボランティアグループで避難所に行って子どもに声をかけているそうなのですが、笑えなくなったり、親の傍をはなれなれなかったり、逆にしゃべってばかりだけど肝心の受け答えはできなくなったり、ともかく頑な殻をつくってしまうらしいのです。
PTSDの兆候とのことで、その回復に向けて感情を表出させることがひとつの手らしいのですが(ここら辺、わたしはよくわかっていないので、解釈がまちがっていたらすみません)、泣いたり、わめいたり、大声だしたり、笑ったりといった そんなこどもが当たり前にすることができなくなっている子がいるとのこと。
公民館の一室に親に伴われて集まってきても空気が澱んでね・・・と
そんなことを話しながら長岡へとわたしの車で向かっていたのですが、そのとき車にかかっていたCD『祝福』に何かピン!ときたようで、貸してくれないかというので、とりあえず貸してそのうち新品を送るということに。
その後、わたしが帰阪してからその友人から電話があり、「子どもが口を開いた!泣き出してくれた!」と興奮した報告が!!
待合室みたいなところで『祝福』をCDラジカセで流していたら、何もせずに親の傍でじっとしていた子どもが「お絵書きしたい」と言い出したり(たくさん鳥を描いていたらしいので、もしかして「44わのべにすずめ」?)、
きこえてくるリズムに体を揺らし出したり(コロコロの「グリンピースのうた」らしいです)、動物の物まねをしながら踊り出したり、子どもたちの空気が動き出したそうです。
そのあとで面談をすると「地震が怖かった」と言えるようになっていて、
感情を取り戻し始めているのがわかった、音楽のおかげだ、と云っていました。
それまで待合室でラジオ、クラッシック、歌謡曲をかけてみたが、ここまでの反応はなかったそうです。
アニメの主題歌などだとパニックを起こす子もいて(いつものようにテレビがみたくなるらしい)、何か音楽を・・・と思っていても適当なのがなくて難しかったらしいのです。
子どもたちは、知らない曲だけど楽しそうに歌う「ひとの声」に惹きつけられてイメージを膨らませていくうちに、そのイメージに夢中になっていったのではないかと友だちは小難しく分析していましたが、そんな格好つけの分析より、珍しく興奮して電話してくる友だちの声にわたしが嬉しくなってしまいました!
(わたしもその音楽の力の現場を見たかった!!)
すごいですね。子どもの心を救ったんだ!と誇っていい『祝福』だと思います。 友だちの決め台詞、
「生命力にあふれた歌声の力だね」(ええカッコしぃ、だ・・・(苦笑))クサいけれど、ど真ん中ストライク!!でした。」


うれしいですね。
書いてくれたのは我が団で歌っている西野 貴子さん。
彼女、故郷が新潟。地震後帰る折りのこととその後の出来事を報告してくれました。
最初、「こんなことがありました」と練習場で立ち話をしてくれたのですが、是非これはメーリングリストに流してくれるようにと私が頼みました。
上の文はそれを受けて書かれたものです。

実はこれまでにも演奏会後やCD試聴後に似たような感想を頂いたことが沢山あります。しかしこれほどに胸を熱くしたことは初めてです。
被災地で、それも子供たちが反応を示してくれた。
こんなに嬉しく、そして大きな喜びはありません。

多くの方々が避難所での生活を強いられておられる現実の中を思うとき、本当に心が痛みます。
これから冬に向かう中、いっそう困難な状況が続くことは必至です。
心が痛みつつもお役に立てたことに少しだけ安堵感を抱きながらも、一刻も早い復興をと願わずにはいられません。
私たちに何かもっとお役に立つことがないか、考えてみたいと思う私です。



No.574 '04/11/12「嬉しい便り」終わり