「大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団」コーアマスターの倉橋史子が客席で聴いた感想を書いてくれました。

 

マントヴァからの移動後のすぐその日に演奏会という事で体力的にもタイトでしたが、まろやかで優しい響きの教会でリハーサルも順調に進み安心しました。

メインの街中にあった為か観光や旅行中で足を踏み入れる方々が多く、リハーサルはまるで公開練習みたいになってしまい、どんどん人が席に着かれ最後は演奏会状態。

終わって先生が振り向かれた時には拍手が起こり、この教会では二回演奏会をしたのと同じ様な感覚が残っています。

リハーサルが終わってから「何時から本番か?」と聞いて下さる方や、目の不自由な若い女性でしたが「本当に美しい!また後で来るので時間を教えて欲しい」と夢見る様な表情で訊ねて来て下さった事、「CDはどこで買える?」と来て下さった方など、リハーサル前から教会内は期待に満ちた温かい雰囲気でした。

晴美さんにはオルガンを演奏して頂いたのですが、前日と演奏された同じ曲がまるで違う曲に聞こえたくらいのオルガンの大きな違いに、私は驚きました(ピッチだけの事でなく、造られた時代やオルガンの種類でこんなに変わるのか…と恥ずかしながら大きな発見でした)

この日のプログラムはアカペラの西洋ものの宗教曲が中心でしたが(この日は私も一緒に歌わせて頂きました)、天井まで歌声が届いた後に、下に降り注ぎまた天井に戻って、最後は天井で消えていく音の粒達(音の粒子)を確かに感じ、その「音達」の訪れの繰り返しがまるで見える様でした(「そうだった!やっぱり音ってこうやって見えるものだったよな」と久し振りのヨーロッパでの教会の響きを肌で噛み締めた幸せな空間でした。

客席でのお客様の表情も温かく、ハンカチを何度も目に当てておられたご婦人がおられました(「あら、泣いてはる」という印象です)

ここでも最後は沢山の拍手と共にスタンディングオベィションが起こり、あの瞬間は何度経験しても奏者としては胸が熱くなる瞬間です。

 

演奏後、用意して頂いた楽屋部屋に退場していく時(丁度CD売り場の前を通る事になりましたが)、お客様からまた自然に拍手が起こり、広がって、最後の一人が退場するまで拍手を頂きました。

(これはサプライズで大変嬉しい出来事でした!)

CD売り場も盛況な様子でしたが、オーストリアからの旅行中でたまたま立ち寄り演奏を聴かれた若い女性の方は「今回の旅行は今日で最後となるのですが、最後にこの演奏を聞けた事で旅が完結する事が大変幸せ。有り難う」と本当に嬉しそうに言って帰っていかれた姿や、私達のそばをなかなか離れようとせず(最後の片付けまで見ておられた)、最後に「明日はどこで歌うのか?」と聞いてこられたご老婦人が印象的でした。