No.('99/9/23)

邦人合唱曲シリーズVol.5


演奏にあたって
当間 修一

「邦人合唱曲シリーズ」は名の通り、我が国の作曲家による作品を演奏するするために計画されたものです。
「大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団」は創設当時、ドイツの作曲家であるハインリッヒ・シュッツの作品を研究、そして紹介する目的で演奏活動を始めました。
現在では、シュッツの作品を軸としながら、ルネッサンスから現代曲までの幅広いレパートリーを持つに至っています。

「シリーズ」の中でもこの「邦人合唱曲シリーズ」は、私たちにとって<楽しみ>と<緊張感>に満ちた演奏会となりました。
リアルタイムで作曲家とその作品をご紹介しようとするわけです。
テキストも、いつものドイツ語やラテン語といった外国語ではなく、私たちの日常語、あるいは伝統語や歴史語といった言葉を扱います。
我が国の文化を考えるいい機会となっています。
できる限り幅広く、様々な様式で作曲されたものをご紹介したいと思うのですが、限られた時間内のこと、その選曲は楽しみとはいえ、いつも苦慮するところです。

今年から、作曲年代の少し古い作品をも紹介していくことにしました。
「海鳥の詩」(広瀬 量平)がそれにあたります。初演が1978年です。
「エトピリカ」が特に有名でしょうか。この曲によって青春時代を迎えた若者は今では社会人として中堅どころ、よく流行って歌ったものです。

作曲年代の新しいものとして、去年初演された作品を二作取り上げます。
「浮舟」(西村 朗)、そして「やさしさは愛じゃない」(三善 晃)です。
「浮舟」は源氏物語の和歌を歌詞としています。それぞれの和歌を独立させることなく各声部によって混在させるという手法。緩急を大胆に取り入れた第一章と第三章、第二章の十六分音符は歌手泣かせのパッセージ。難しさの中にも独特の魅力ある作品です。大阪H・シュッツ合唱団として初めて取り組む西村作品となりました。
「やさしさは愛じゃない」は三善 晃と谷川俊太郎のコンビによるもの。写真家荒木経惟と谷川俊太郎との共著、「やさしさは愛じゃない」(幻冬舎)が基になっています。書法は「地球へのバラード」の姉妹作かと思わせるものがありますが、その濃さもまとまりも深い。三善トーンの魅力です。

素朴な祈りの中に生命力溢れる音楽を、と5年の歳月をかけて作曲された「祈祷天頌」(鈴木憲夫)。
歌うとは祈ること。原始の時代より脈々と受け継がれ、未来へと繋がる人々の祈り。古代文字をテキストに鈴木トーンが力強く響きわたります。

一つお詫びをしなければなりません。
チラシに三善 晃「五つの日本民謡より」「阿波踊り」と「ソーラン節」がありました。当初はプログラムに含むつもりでしたが、他の曲を選曲した際、プログラムから外さなければならなくなりました。
しかし、合唱団員は歌うつもりでいます。
これはもうアンコールしかないですね。





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