八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.04


【掲載:2013/05/30(木曜日)】

やいま千思万想(第04回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[活用しよう「バンナ岳森林公園」]

 かつて「海人間」と「山人間」に分けた人がいました。
海好き人間と山好き人間のことを言ったのでしょう。
さしづめ私は転向人間というべきで、いつ頃からか海好きから山好きへと変わり、山好きとなって以来ずっと海に興味と憧れと望郷を抱きつつ森に住んでいるような人間です。
石垣に来始(きはじ)めて気付いたのですが、この島は山と森の島だったのですね。
海に対する興味からダイビングで訪れた私が、この当たり前のことに感銘を受けたのはつい最近のこと。今にして思えばおかしな話だと自分自身の滑稽さを思います。

 山好きの私が石垣に滞在中、県営「バンナ岳森林公園」で散策するのが楽しみでした。
歩いて気付いたことはその広さです。
バンナ岳(標高230メートル)の山麓に広がる広大な公園はおよそ400haにわたる森林丘陵地帯の中にあります。
未だ整備中のゾーンもあるようですが、全完成の折にはその規模、質ともに沖縄県だけでなく我が国の誇れる最良の公園の一つとなることでしょう。
亜熱帯性気候風土を感じさせる多くの珍しい動物や植物。鬱蒼と茂る木や草の中に続く小道、木の橋、広場や小道を繋ぐ階段、広場の芝生、子どもたちが遊べる遊具、そして遠見台などの行き届いた施設も整っていてとても散策しやすいと感じました。

 公園西口での国指定特別天然記念物カンムリワシとの遭遇は今でも思いだすと興奮を覚えます。カメラを向けても動じず、こちらをじっと見つめるその眼に一瞬こちらが怯(ひる)んでしまうほどです。
西口と北口の中程にある「ふれあい子ども広場」は今年の4月にリニューアルオープンしたと聞きます。
私はその広場を車の窓越しにしか見ることができなかったのですが、これからは訪れるのを楽しみにすることができます。
自然愛好家のみならず、恋人たちで、ご夫婦で、家族で、子供たちで一日の数時間をレクリエーション、憩いのひとときとして過ごすには格好の場所です。
しかしながら、ただひとつ残念だと思うことがあるのですね。
そのアクセス、交通手段です。現在は公園南口「八重守の塔」バス停へのバスがあるだけ。
しかも本数が少ない上、バス停から展望台への距離もかなり上りで長い。
私は北口で散策することが多かったのでレンタカーでの行き帰り。
路線バスが公園のために一日数便だけでもいい、市街地から南口、西口、「ふれあい子ども広場」を通って北口へと行けるならばどれほどの利用者が行き交って便利になるかと思いましたね。
遊歩道でのウォーキング、そしてバードウォッチング、星空などの自然観察には打って付けです。

 日本最南端の森林公園、「バンナ岳森林公園」は地元の方々の憩いの場としてだけでなく、沖縄県としても日本にとっても誇れる公園だと私は断じましょう。
もっと全国に知って頂かねば。
そして沢山の人たちが訪れ、定期バスも賑わって頂かなければ。
そう奮起する私です。





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