八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.07


【掲載:2013/07/11(木曜日)】

やいま千思万想(第07回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[「遊びの海」から「生きる海」に]

 このコラム連載の初回に書いたのですが、私が石垣島に来たきっかけは御多分に洩れずブームになっていたダイビングでした。
団員の熱心な勧めもあってのことでしたが、私自身「海」に興味を持ち始めていた頃とタイミングが合い石垣に来ることになったのですね。
 幼い頃は近くに海もなく学校のプール以外で泳いだ記憶がありません。
それが小学校3年の頃に引っ越した家の近くには海水浴場があり(大阪堺の浜寺海水浴場)、よく通いました。海との戯れはその頃に始まります。
いまでは砂浜の海水浴場がなくなり、大きくて立派なコンクリートのプールの施設がその代わりとなっています。
 しかし、海とプールではあまりにも違いすぎて、代替にはなれない何か大きなものが失われてしまったように感じるのですね。
プールだと危険度は確かに低くなるかもしれないのですが、波と戯れる浮遊感、いきなり足が立たなくなったときの不安と冒険にも似たあのワクワク感はありません。最近ではそれに似せた仕掛けがプールにあったりしますが、やはりあのスケール感は味わえるものではないですね。まず、周りの景色が全く違うのですから。
 現在、昔遊んだ海水浴場は砂浜の代わりに臨海工業地帯の水路となり競漕用のボートが走り抜けています。
もう昔の面影はありません。
砂浜に足を沈めながら歩き、海岸の自然な風景、そこかしこでうごめく生き物、そして海水の塩辛さを味わいながら泳ぎ、色とりどりの熱帯魚を見る、それが幼い頃の郷愁とも重なって、ここ石垣島にやってきたのでした。

 素潜りが良いと言っていた私。
しかし長く海中にいることができることと、新しいことにチャレンジしたい気持ちがスクーバダイビングへと向かわせました。
「遊びの海」が「生きる海」に変わったのはこの頃からです。
 地球は海の星。月から眺めた青い地球の何と美しいことか!地球の生き物は海からの賜(たまもの)。
そこに生きるもの全てが生態系を形成する。
その秩序を壊すことは地球そのものも壊すことに繋がります。
その思いを我が身という小さいものながら体感させられた、それが海への潜りだったのですね。

 お手伝いをしてくれたのは長きに渡ってマンタを紹介し、海中ガイドを務めて頂いているダイビングショップ「シーウォーター」の小室昇さんで、その潜りによって海と人との付き合い方を教えて頂いています。
海、その海岸には想像を超える「モノ」が流れ着きますね。
隣の国、いやもっと遠くの国からも流れてきます。海岸線、実は海によって地続きのように繋がっているのですね。
 7月15日(第3月曜日)は祝日「海の日」です。
世界の国々の中で『海の日』を国民の祝日としている国は唯一日本だけだそうです。
「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う日」と制定された日なのですが、思うのですね。
 「繁栄」より「感謝」が優先される方がいいと。
時折怒りの鉄拳のように荒ぶる海、しかし人の欲で壊さない限り、びくともせず、恩恵を与えてくれるのですから。





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