八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.16


【掲載:2013/11/28(木曜日)】

やいま千思万想(第16回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[音楽で日本、沖縄の魅力を伝えたい]

 海外での演奏も今回で何回目になるのでしょうか。
この原稿は演奏旅行前に書いています。
今回訪れる国はスペイン。実は初めての地です。
これまでは主にドイツを中心に、オーストリア(ウィーン)、イタリア、スロバキアなどで合唱団を率いて指揮してきました。
今回の訪問地スペインには私が名古屋に創設した「名古屋ビクトリア合唱団」による演奏旅行となります。

 スペインと言えば団名に冠したトマス・ルイス・デ・ビクトリア〔ヨーロッパルネサンス音楽最大の作曲家と称された作曲家(1548年-1611年)〕の生まれた聖地です。
その地でビクトリアの名曲を是非とも団員と共に演奏したい、その思いが今回のコンサート公演となりました。
そのビクトリア作品らの魅力について語るのは別の機会に譲るとして、もう一つ私には大事な思い、目的がありました。
それは日本音楽と沖縄音楽をスペインで響かせること。
音楽を通して「我が国の音楽」がどのようにスペインの人々に受けとめて頂けるか、それにとても興味を持ちました。
文化交流とはそれぞれの国の音楽を演奏してこそ、その真価を問うことが出来ると思う私です。

 曲の一つは柴田南雄作曲「追分節考」。
民謡を《野卑なり》と断じた明治時代の洋楽一辺倒に異議を申し立て、追分節を通して民謡の素晴らしさと国の文化を尊ぶべしとのメッセージ。
演奏は男声が客席の外側や客席内を移動しながら歌い、女声はホール全体を包む日本のハーモニーを奏で、あるいは時にお座敷唄を歌う。
尺八も参加してホール全体を伝統的ともいえる音響で包もうとする、音源を移動させてのシアターピース形式に依る曲です。
この曲、各国で何度も演奏してきましたが、聴衆は例外なく驚異的な反応を示してきました。
演奏後総立ち(スタンディングオベーション)、その驚嘆振りは今でも脳裏に焼き付いています。

 もう一つの曲、それは沖縄音楽をアレンジしたもので、瑞慶覽尚子作曲「宮古島からのたより」と「うっさくゎったい」からの抜粋曲です。
「多良間よ」「平安名のマチガマのアヤグ」に「なり山あやぐ」「月ぬ美しゃ」「上り口説」を演奏することにしています。
三線とパーランクーの鳴り物が入ります。
三線も太鼓も団員に奏してもらうことにしました。
この曲がきっかけとなり、団員は生まれて初めて三線を手にし、練習し、ステージで大公開です。
歌だけでなく楽器を通じても沖縄を体験してもらいたかった私の意図が実っています。
プログラムにはスペイン語に訳された解説文によって曲の成立や歌詞などが掲載される予定です。
聴衆の方々にとって、初めて接する音楽の意味内容を理解する一助となればとの思いなのですが、真の理解とは、解説文などではなく「音楽そのもの」に依って心を通わせることにあります。
そのことを実践を通して実現できればと願っています。
日本の、沖縄の魅力を伝えるつもりです!
その成果、次回に報告できればと思っています。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ