八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.22


【掲載:2014/01/30(木曜日)】

やいま千思万想(第22回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[平和的な「グローバル化」の観光地]

 南の島でスキーの話をするのもどうかと思うのですが、今回は北海道のある町について書きたいと思うのですね。
きっと八重山にも参考になると思っています。
40歳からスキーを始めました。
夏のスポーツは結構したと思うのですが、冬のスポーツをしたことがなかった私です。
合唱団のメンバーに誘われて始めました。
そして当然大阪にはスキー場がありませんから、スキー場を色々と巡った後、やはりメッカの北海道ニセコに行き着くことに。
その北海道の雄大さとパウダー・スノーに魅了されて毎年冬の一週間ぐらい滞在します。
(夏は川の急流下りであるラフティングも話題で通年型のリゾート地となっているようです)さてそのニセコ、私が行った時と現在とは全く様相が変わってしまいました。
何と、今では「外国」となってしまったのですね。

 町を行き交う人々の約90%が外国人です。
夜の楽しみである居酒屋ではほとんど日本人はいません。
聞こえてくるのは外国語ばかり。
ニセコは日本のリゾート地でも有名な外国人居留地となりました。
ここ数年、ニセコ町の人口約5千人に対して観光客は年平均100万人で、人口の200倍近くになったそうです。
いや、実は観光客ばかりではなく、今ではこの地に住み着いてしまった人も相当数います。
しかも外国人が多い(不動産所有者の80%近くが海外在住者)。

 私が初め訪れたときは、日本風のお宿があったり、洋風のペンションでもどこか昔ながらのスキー宿風情。
「日本の」という佇(たたず)まいを感じさせながら、それぞれのおもてなしで賑わいを見せていました。
しかし、年を経る毎に様相が一変していくのですね。
あちらこちらで建物が替わり(オーストラリアをはじめ、今では米国、香港、シンガポール、マレーシアなどの大資本が参入)住む人も変わり始めるのです。
私の泊まっていた常宿も惜しまれつつたたまれ、周辺にはコンドミニアム(分譲マンション)がすごい勢いで建っていきます。
 街中を闊歩(かっぽ)する圧倒的な外国人。
そこは正に外国。町役場で働く外国人職員、インターナショナルスクールも開校。
国際リゾート地を目指しての町ぐるみの取り組みは始めそれなりの盛り上がりや効果も生んだようですが、今では期待されたほどには経済効果が無いとの報告も出ています。
実はその建物のオーナーたちのほとんどが海外在住者。
お金の授受やカード決済は外国人同士で行われる、つまり当地には「お金は落とさない」となるわけです。
「訪れる人は多いけれど、経済状況はそれ程には良くない」そして「隣の家や土地の所有者は外国人」という報告なのですね。

 観光地は難しい問題を抱えます。
世界的な視点に立ち、平和的な「グローバル化」を目指しつつ、地元の領域(生活圏や文化圏)をどう守っていくか、それがとても重要性を増してくるのですね。
早めの、そこに住む人たちとの合意を得た確かな法整備が必要だということです。
私の冬の風景は日本の中の外国でした。





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