八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.30


【掲載:2014/06/12(木曜日)】

やいま千思万想(第30回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[人間って素敵で厄介な生き物(パート2)]

 今回は「好き・嫌い」の話を。
人間って、というか生物というものは高カロリーな食べ物を本能的に好むそうです。
そのように脳にプログラムされているようなのですね。生命力の源ですね。
私のように太るのを制限しなければならない者がこれを知れば、ダイエットなど本当に難しいことが解ります。そう簡単には体重を落としてはくれないのです。

 子供たちは甘いものが好きです。
とくに女の子はケーキとかお菓子類をよく食べます。
これは成長するために欠くことのできない食欲なのですが、ではしょっぱいもの、酸っぱいもの、苦いもの、はどうか。
これは避ける子供が多いですよね。

 ちょっと大人の話になりますが、ビール美味しい!ですね。
でも最初から好きでした?私は最初、嫌いでした。
あの苦みのどこがいいのか、なんて周りにも言っていたものです。
いまではあの喉越しと共に「〈あの苦み〉が良いんだ」、と言っています。
変われば変わるものです。

 話はまた変わりますが、「好き・嫌い」ってどうして起こるかご存じですか。
食べ物でも、人物でも、転じて人生における生き方にも、好き嫌いってありますよね。
「好き」とは「どれだけそれに慣れているか」ということなのだそうです。
単に「どれだけそのものに時間を多く費やしていたか」にかかることなんだそうです。
本能による絶対的な判断に拠っているのではないのですね。
 確かに「甘い」は良いものだと脳が経験で知っていて、「苦い」ものや「酸っぱい」ものは毒性が強いと太古の時代の経験から知ってしまった。
その結果、甘いものが良いもの、好きだという好感となり、そして「好き」なことは「正しい」という判断に繋がったりします。

 自分にとって心地良いものは「正しい」のですね。
これは嫌いなものは間違っている、正しくないという判断と隣り合わせです。
人間って悲しいもので、単に過ごした一時期の環境の影響で、人は限定された個人的な価値観を正誤の基準にしてしまうということをしでかしてしまいます。
人は全て同じ環境で育ったというわけではないのに、好きも嫌いも同じように感じるとは限らないのに「同じ」だと思い込んでしまうのですね。

 「好き嫌い」「正誤」なんてとても危ういものだ、と知った方が生き方に強さが生まれると思うのですが、いかがでしょう。
自分の世界って矮小(わいしょう)なものです。
再びビールを持ち出して恐縮ですが、我慢して飲み続けているうちに「これ、意外と美味い!」となります。
大人的に言えば危険なものに踏み込んだという一種の危機快感もあるかもしれません。(人間って厄介な生き物)

 人間は「学習」をします。
学習によって生き方を堅固なものにしてきました。
好きなものには毒があるかもしれませんし、嫌いなものの中には人間に必要な、強くしなやかに生きる知恵が潜んでいるかもしれないのです。(人間って素敵な生き物です)
(この「好き嫌い」、次回もう一度つづきます)





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