八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.36


【掲載:2014/09/04(木曜日)】

やいま千思万想(第36回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[人間への探求 八重山の自然と共に]

 この国の南に位置する島々は気温だけでなく熱い日々が続いています。
島は古来、日本文化に至る南の入り口であり、近代から現代へは政治的拮抗の場として人々はその熱気に喘(あえ)いで来ました。
このコラムではその熱きうねり、動きは何だろうと探ろうとはしますが、政治的な視点でのアプローチはしません。
私的でバランスを欠いた思い入れは出来る限り避けて書きたいというスタンスによって書き始めています。

 私は人間に興味を持ちます。人間とは何か。
人間として成り立つ条件とは何か、それを知りたいと思っています。その時代時代の喧騒ではなく、その喧騒を起こす人間そのものに興味を持ちます。
叡智を持って脈々と連なってきた人間の命、それを探りたいとするのです。
音楽を奏するのもその一環としての営みだと私は思っています。
音楽を通して自然を知りました。声や音響の不思議、そしてそれを音楽として聴きいる時、人の感性の危うさとそれに伴う官能の世界は身も心もとろけさせる妙薬です。

 人間はまだまだ進化の途中かもしれません。
音楽の世界を覗いて見ても、進化しているものと、いまだ太古の原始的なものに支配されている感覚を知ることができます。
 人間は人間のみでこの地球に存在するものではありません。
生物である人間には生きるための条件があります。
それが自然と呼ばれる「地球環境」です。
その重要性が歴史を追って痛感されてきました。
 人間にとって一番大切なのは、生きて行くための環境であり、その環境(自然)をどう感じるのかだということを年々更に強く思うようになってきています。
社会の出来事に無関心ではありません。
いや、関心が深いからこそ出来事そのものに振り回されること無く、根っこの、事の起こりの原因、その人間への探求です。
 石垣島の海と空を眺めながら、つぶやいている私がいました。拙(つたな)いものですが記してみます。



漆黒の夜は渦巻いている
海の底から聞こえる呻きと歓びの声
静かに 夜は威厳をもち
湧き上がる朝の光を待っている
波 なみだの波 波のはざま 吐息の音(ね)
湧き起こる朝日 沸き立つ雲 青々とした木々

空はさあおに突き抜けて 渦巻く宇宙へと導き
地にはもぞもぞとうごめく幾億の虫(いきもの)たちが荘厳の生命を放っている
いのち満ち 喜びと憂いに溢れて蠢(うごめ)いている

あかね色 夕暮れ 孤独なあたたかい水平線
宇宙の鼓動が聞こえる永遠の境界
匂い立つ風 命の風 海の声は賑わしく
明日の命のために新しい光をまっている



 宇宙を感じ、宇宙と一体となる私が好きです。
友の存在を感じ、友から愛されていると感じる私が好きです。
友も私も、命の尊さを宇宙の中に感じ、大きな何者かの存在から愛されている。
命ある熱気、だからこそこの島々は湧き立つ朝日を待っているのではないか、そう感じる私です。





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