八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.46


【掲載:2015/01/22(木曜日)】

やいま千思万想(第46回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[久しぶりに訪れた石垣の正月は温かい]

 私が石垣島に訪れるようになってほぼ20年。
いつも味わう季節は夏と、秋。今回初めて正月を挟んだ9日間を体験しました。
いやぁ、もっと早く来たかったですね。冬の石垣はいろいろと印象的でした。
行くに当たってまず私を悩ませた問題は何を着ていくかということ。着ていく服に困りました。
 今回は仕事の都合で大阪からでなく、中部国際空港を12月28日に発ちました。
寒い日で、大阪でも名古屋でも珍しいくらい本格的な冬を思わせる日が続いていて、着る服は厚着の上にコート。
しかしこれではさすがに石垣の温かさの中では着すぎでしょう。と、心配しながらでの出立です。 (その後記録的な酷寒で多くの都市で雪が降り積もるという厳しい日々が続きました)
 石垣空港に着いて驚きましたね。強風豪雨、そして肌寒い!
想像もしていなかった歓迎振りにただ笑うしかない石垣島第一日目です。
想像した温かさは何処にと思うものの、着てきた服は着替えることもなくホテルまで。
 翌日の29日も寒い。
面食らい気味ですがこれが通常なのかどうかは初めて訪れる私には判りません。
想像が温かすぎたのでしょう。ところが一変、30日は天気が快復、暖かい!

 それからの年末年始はとても暖かく汗ばむほど。
「石垣に移り住んで14年になるが、こんなに暖かい正月は珍しい」との感想も聴きました。

 石垣の風景も変化し続けていますね。
街並みは少しづつ変貌しているようで見慣れたお店が他のお店に変わっていたり、人も建物も、誇るべき景色も徐々に様変わりしていくようで私には少し不安が横切ります。

 ところで、年が明けて飲食店などのお休みは都会に慣れてしまった私には新鮮な驚き。
しかしこの静けさと正月の過ごし方には共感。羨ましくもあり、その時間の流れは心落ち着ける貴重な体験でした。

 4日、知人の娘さんが二十歳となって成人式に出ると聞き、「現代の若者は如何に?」との興味もあって、石垣市民会館での成人式に出掛けました。これも新鮮な驚きでしたね。
出席の若者はピアスや化粧といった現代っ子らしい着こなしもありながら、羽織袴に着物姿が目立ちます。
また、その温和(おとな)しさが特筆もので、会話、所作、そして人の話をよく聴く好印象の若者たちです。
 ホールには親も親戚も、友人や先生らしき方々も同席してのお祝い。
その暖かい空気に包まれている「式」に感動する私でした。
本土からの、人、価値観、文化といった強い押し寄せを感じる石垣が、まだ素朴に人と人との繋がりや温かさを残していることに拍手を送りたい気持ちで一杯でしたね。
 伝統衣装や方言ももっと聴くことができればと(意識高くそれらを実行している方も居られましたが)、私の奥底で身勝手なつぶやきもあるのですが、ホールを後にしながら「学校や就職で島を出ても、必ずいずれは戻ってきて、手に付けた技術や知識を活かしながら伝統の島を受け継いで行ってほしい」と祈りのつぶやき≠続けていました。





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