八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.56


【掲載:2015/06/25(木曜日)】

やいま千思万想(第56回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[さまざまな音世界 音律の話(その2)]

 さて、「音律」とは一言で言えば、《音の基準》のことだと前回書きました。その《音の基準》は音階です。ドレミファソラシドですね。
歌を歌う場合でも、楽器を奏する場合でも始めは音の並び、西洋音楽でいうところのドレミを先ず学ばなければなりません。
このドレミの並びを「音階」と言い、その音階の音と音との幅をどのような「並び方」にしているか、それが音律なんですね。

 「音階」、それは音の階段です。その階段一段一段の幅の違いが時代によっても国によっても異なっており、それぞれに特色ある音の並び、すなわち「音律」を作っているというわけです。音階の幅は全て同じでは無い、一つだけではないということですね。
 あるメロディーを歌うとします。その歌を異なった「音律」で歌えば随分と違ったものに聞こえてしまいます。
いわゆる調子外れな歌になるのです。歌にはそれに相応しい「音律」がある、ということです。
そのように大事な「音律」。では順を追って一歩一歩足を踏み入れていくことにしましょう。

 先ずは、世界中で多く用いられている西洋音楽の音律から始めてみることにしますね。
最初の音律はギリシャ時代に考えられた「ピタゴラス音律」です。
この音律、一本の弦から生まれました。音楽的にというよりは数学の取り組みで生まれたといってよいのですが、結果はドレミファソラシドという8つの音を生み出しました。数学の計算でつくられたものですね。
 まず一本の弦を打ち鳴らします。現代ではギターでも良いですし、八重山なら三線をイメージしてもらってもいいですね。
楽器を二つ用意します。一つの楽器は指を押さえずに鳴らし、もう一つの楽器は同じ弦の二分の一(半分の長さ)の所を押さえた音を鳴らしてみてください。きっと同じ音のように聞こえるはずです。いわゆるオクターブ上の音(例えば「ド」と上の「ド」)ですね。声で言えば、男声の声と女性の声の関係です。
「この同じ音」というのがまた厄介なのですが、ここでは気持ち良く溶け合う、協和、調和の強い音としておきましょう。「うなり」が無い響きともいうのですが。

 「うなり」についても説明がいるかもしれませんね。音やハーモニーを判断するための大事な要素、それが「うなり」です。
音の高さがわずかに異なる二つの音を同時に鳴らすと、周期をともなって「ゥワーン、ゥワーン」と音が大きくなったり小さくなったりする現象のことです。
この、「うなり」無しという響きを聞いたところから実は「音律」が始まったのです。

 ピタゴラスは心地良く響くオクターブを発見した後、弦の長さの三分の一の所を指で押さえ、三分割した弦の三分の二の長さが鳴れば「ソ」であり、残りの三分の一を鳴らせばその「ソ」のオクターブ上の音が鳴り、最初の「ド」の音と一緒に鳴らせば三つの音全てが美しく心地良く響くことを発見します。
 この不思議な音の話、次回に続きます。





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