八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.63


【掲載:2015/10/08(木曜日)】

やいま千思万想(第63回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[さまざまな音世界 音律の話(その9)]

 前回では紙面の関係で沖縄のことを書くことができなかったので今回は「沖縄音階」について書きます。
これも結論を先に書いておきますね。それは《まだはっきりとは判っていない》ということ。今後も研究が進み、解明されることを望みたいと思います。

 しかし、こういう問題があり、解明が必要なのではないか、を書くことができると思いますので、それをご紹介してみたいと思います。
一つは代表的な沖縄音階とする「ドミファソシ(ド)」の問題。
一般的にはこの音階が沖縄音階であるとされています。が、実際には「レ」が含まれていることが多いのですね。つまり「ドレミファソシ(ド)」となるわけです。
「6音音階」のようになるのですね。実際の曲では、この音階のように「ド」から始まるのもあるのですが、「ファ」から始まるのが多いのが特徴です。特に「古典曲」で現れる音階では「ファソシドレミ(ファ)」ですね。
 さて、ここに登場している「レ」をどう捉えるか?が問題の一つです。
ある説によると「レ」は経過的、装飾的に用いられたのではないかと言われています。
よく現れるので重要な音として捉える向きもありますが、「レ」が終止音とする曲がないことから、必要とされた音であっても音階音としての独立性は低いとされます。
「レ」は「ミ」との関係である種の転化されたものではないかとの見方です。
それに加え、「ファ」が上がったのではないか、「シ」が下がったのではないか、そういった変化した音階もあったりで、その出所はまだ理論的には解明されていないという問題があったりします。

 というわけで、私は沖縄の歴史に思いを馳せることになります。
どういった文化に依っているのか。それはどこからやって来て、どう根を張ったのか。
それにとても興味をもちます。そのルーツ(祖先)をたどれば音階の故郷も判るかもしれないからですね。
 ここ50年の間に大きく発展した研究があります。
DNAやタンパク質などの分子を用いての「分子進化学」、特に人間の進化を研究する「分子人類学」なのですが、その分野が日本列島に住み着いた人々のことを解明し始めています。(今年の8月出版された「日本列島人の歴史」斉藤成也著〔岩波ジュニア新書〕を紹介します)それに依ると、日本列島には3種類の人々が住んでいて北部はアイヌ人、中部はヤマト人、そして南部がオキナワ人。
北部のアイヌ人と南部のオキナワ人には(ヤマト人とは異なった)DNAでの弱いながら共通性があるということですし、沖縄のグスク時代の前後に多数、九州から第二波の渡来民の子孫を中心としたヤマト人が移住し、更に江戸時代から現代には第三波の渡来民系の人々も加わって現在のオキナワ人が形成された、としています。
当然、音楽が影響を受けています。
しかし、音楽はそれ以前のもっと古い系統の流れが含まれているのではないか。第一波の人々とは?それが私にとって重要なのですね。
(この項つづきます)





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