八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.102


【掲載:2017/05/25(木曜日)】

やいま千思万想(第102回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

散歩でのあいさつ「ありがとうございます」

 石垣は熱いでしょうね。天気予報など見ていると29度や30度なんて数字が出ています。
本土でもつい最近、5月だというのに30度近くの地域もあったりで夏日です。
おまけに一日の寒暖差が激しく、朝と昼とでは10度以上の差があるなんていうことも各地の予報で聞きました。
私の住む大阪でも同じで、出掛けるにはどういった服装を着ていけば良いのか迷います。
そんな日々の中、私の術後の体力回復には静養と適度な運動が良いとアドバイスされていますから、
暑いながらも涼しい時間帯を選んでは気分転換も兼ねて歩くようにしています。
石垣では散歩なんていう観念は浮かんできませんね。
私が訪れるのは夏が多いものですから、暑さや(半端じゃないですね!)紫外線とやらでそう簡単に外へ出て、ノンビリと歩くなんて考えは浮かびません。

 私の散歩に話は戻しますね。住んでいる地域には千里川という一級河川が流れています。
昔は「暴れ川」として随分と猛威をふるったようですが、今では改修工事も行われて、サギやカモ、コイ、そしてカメなどが生息している温和しく優しい川へと変貌しました。
その川縁(かわべり)が私の散歩道。上に掲げた生き物にいつも癒されて一時間ほどの行程を楽しんでいます。
ジョギングをする人、私と同じように夫婦でゆったりと歩いている人、時には杖などついてリハビリ中という人などと行き交います。
普段は目が合って軽い会釈ということになるのですが、時にはできる限り目を合わせないようにする方や、遠くから距離を保とうと反対側に避ける方もいらっしゃいます。
目と目が合えば良いですね。
言葉を掛け合うことになればなお良い、と思う私。
しかし、時には人との関わりが辛くてできる限り会話を避けたいと思う日だってあります(最近のように体力が衰えているいる時や忙しくて頭の中は仕事の事ばかりといった日ですが)。
そんな事情があるときはコミュニケーションも削がれがち。そんな時は致し方ないものとして、お互い意識しながらも少し伏し目がちになる「散歩族」たちです。

犬の散歩をしている方は多いですね。
お年を召された方だったり、若い娘さんだったり(不思議と若い男性はあまりいませんが)、またご夫婦で犬を挟んで会話しながら歩いていらっしゃる方々です。
従え風、または引っ張られて後からついて行かされている風もあったりでなかなか面白い風情です。
犬とすれ違うときは気分が違いますね。いやに積極的になる私。
最近、犬が松ぼっくりをくわえているのを見ました。
ちょっとその仕草が可愛くて話しかけます。飼い主さん(若い女性でした)、「この子、それが好きなんです。毎回拾ってきて家に持ち帰るんですよ」と笑顔での応え。
そして優しく犬を見ながら私たちに発せられた言葉。それは「有難うございます」。
この一言に何とも言えない幸せな気分になりました。
飼い主のその一言がこんなに心に響くなんて。
その笑顔も素敵、そして心に染みる言葉でした。





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