八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.104


【掲載:2017/07/06(木曜日)】

やいま千思万想(第104回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

街中で噂が広がりはじめたマントヴァ・コンサート

 「マントヴァ室内楽フェスティバル」出演のためイタリアに渡ろうとした矢先、経由地ドイツでも珍しい悪天候のためフランクフルト空港で足止め。
一行は翌日出航組と、私を含む3人が便を変更してイタリア入りするという二つに分かれました。
日程は計画通りだとはいえ、深夜2時10分に私は目的地マントヴァのホテルに到着。というところで前回のコラムは終わりました。

 先を続けます。マントヴァにはヴェローナ空港からタクシーを利用。外国に行ったとき、良からぬ話も聞くタクシーに乗るには緊張感が走ります。
法外な料金を言われたりすることがあったりするからなのですが、この時の運転手さんは良かったです。
高速道路が夜間工事のため他の道を走らなければならなくなったと事情を話します(少し料金は上がりましたが)。
予定より遅れてホテルに着いたときです。
ホテルは電気も消え、扉も鍵がかかっている様子を見てわざわざ親切にホテルに電話。
また、出迎えてくれたホテルの叔父さんが優しそうで、快く動いてくれました。
一気に不安が吹っ飛んでしまった我々です。

 私はいつも思うのですが、旅先で出会う最初の人物の印象が大切です。
それによって旅そのものが楽しくなるかならないかが決まります。
ドイツでの悪天候で不安を覚えた私を心地良く迎えてくれた出会いでした。
翌日はフェスティバルの出演前日。
練習日でしたから、後から合流したメンバーと一緒に賑わいをみせる街のメイン通りを通り、以前訪れていた「聖バルバラ教会」へ。
そこでの響きが夢にも出て来てくるお気に入りです。
教会では合唱団員もその響きを堪能しながらの練習です。
明日から始まる演奏会が待ち遠しく、ワクワクの期待で始まったマントヴァの一日目でした。
ここでこの日から出会って私たちの世話をしてくれることになった音楽祭スタッフのニコロさん、そして毎晩演奏後にお世話になった飲食店とそのスタッフのことを書かなくてはならないのですが、それはちょっと後にまわしてフェスティバルの話を順を追って書きます。
ただニコロさんの事は随時出て来ると思いますが。

 翌日、現地の6月1日午前10時30分、ドゥカーレ宮殿「川の間」でのコンサートが第1回目。
演奏時間となって案内されて入ってみれば並べられた椅子の前の方に少しの聴衆。
「少ないよね」と思いながらも演奏は快調に進みます。
するとまたたく間に席が埋まっていくではありませんか。
この部屋は観光コースに入っているようで観光客が部屋の後ろを自由に通り過ぎていきます。
その人たちが立ち止まり、座り、聴き入っていくのです。結果的には席が埋まっています。
そして熱い拍手。
これを見て私は「これはいける!」と思いましたね。
この反応によって、二回目以降のステージに確信の期待です。
予想通り正午から始まった二回目の聖バルバラ教会での演奏を皮切りにどんどん噂が広がり、一回毎に聴衆が増えていくことになったのです。
(つづきます)





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