八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.120


【掲載:2018/03/08(木曜日)】

やいま千思万想(第120回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

日本語の特性と日本人の感性

 コラムを書いていると迷う事柄が多々あります。
「漢字」の扱いもその一つです。
日本語って世界的に見てもとても珍しい言語で、その歴史といい、
また日本人の特性である〈外国の文化を変化させて自国のものにする〉という柔軟性といっていいか、自由すぎると言っていいか、
それらの事でとにかく文章を綴る上で迷う事が多いんですね。
先ずは 漢字、そしてそれを繋ぐ仮名文字の扱いです。
漢字は実質的な意味を表します。
平仮名(ひらがな)は主に活用語尾や助詞に使われるのですが、表記上の「送り仮名」の問題もあります。
片仮名(カタカナ)は外国語などに多く使われますね。
このように、漢字、ひらがな(平仮名)、カタカナ(片仮名)、の3種混合は世界的に見ても珍しいです。

 漢字についての問題性を扱った書籍から一つの例をあげるのですが、
足の速いことを意味する「しゅんそく」という漢字を書こうとすれば「俊足」「駿足」のどちらかを書きます。
これは以前はよく使われたもの。
しかし最近では「瞬足」と若者は書くそうです。そう、いまでは三つの選択があることになります。
後者の「瞬足」はテレビのコマーシャルで流れていた商品名が影響していたといいます。
時事変化する漢字表記の一例です。

 どのような漢字を用いて意味を伝えるか大事な選択ですね。
その漢字も文部科学省の漢字制限(常用漢字、教育漢字)を受けているものですから制約もあって全くの自由というわけにはいきません。(目安であって制限ではないと告示されていますが)
 書くことに加えて漢字の読み方もまた難しいです!
一つの漢字に多くの異なる発音があり、また、同じ発音を持つ漢字も多数あることも珍しくありません。
読み方には「音読み(中国から伝わってきた読み方)」と「訓読み(漢字の意味と関連づけられた日本で作られた読み方)」の二種類の読み方があり、
それだけならば良いのですが、音読みと訓読みが語の中で混用されることがあります。
音読み+訓読みの順で読む(重箱〈じゅうばこ〉読み)、訓読み+音読みの順である(湯桶〈ゆとう〉読み)です。
日本語の歴史の流れを示すならば、
口伝→音を表記するために輸入された漢字を当てはめる(万葉仮名)→漢字を簡略化して作りだした平仮名(ひらがな)→漢字の一部を取って片仮名(カタカナ)が作られた。
ということになりますが、これに加えて日本で新しく作られた漢字「国字(こくじ)」もある。
私たちは本当に難しい、複雑な言語を用いています。
 日本語は高度な表現力をもつ、と言いたいところなのですが最近頓(とみ)に曖昧模糊(あいまいもこ)とした、
本質をはぐらかすにはもってこいの言語ではないかと思うようになりました。
表現する言葉が多数あり、丁寧語、謙譲語なども存在し、核心がぼやけやすい。
その結果、論理的というよりは直感的、情緒的になりがちです。
このコラムも常に悪戦苦闘。
解りやすく明確な文章をと思っているのですが・・、難しいです!





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