八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.8


【掲載:2013/07/07】

音楽旅歩き 第8回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[石垣島の真の魅力、それは自然の中で「営む人」]

 カーチーベー(夏至南風)が強く吹き荒ぶ6月25日、私は石垣島の川平に立っていました。
大阪での定期演奏会も終わり、今月15日発刊の自著最終校正原稿を携えて、少し疲れ気味で急ぎ帰ってきたのです。
 次なる日程のため4日間の休養。
 命の洗濯、心身のリフレッシュです。
仕事の休みなら少し努力すれば可能です。
体も頭も工夫すれば休めるでしょう。
しかしリフレッシュ、つまりそれらに「生気を与える」ことはそういつもできることではありません。
だからこそやって来る、いや、帰ってくるのだと思います。
 先ずは米原沖にダイビングです。
お花畑でした。
色とりどりの魚達とサンゴ礁。
その彩りの美しいこと。
そこには人間と海の生物たちの穏やかで平安な交流が坦々と行われます。
 石垣に来るきっかけとなり、その魅力溢れる海との交流を教えてくれている川平ダイビングサービス「シーウォーター」の小室昇さんと潜ります。
人間は孤独ではないのだ!と気付かせてくれる幸せで静かな時間の流れなんですね。

 石垣の魅力は「食」にもあります。
本土から移り住み、地場の食材に様々な工夫を凝らして提供している方々が沢山おられるようです。
そんなお店に出逢えるのは、シマのお店通い同様嬉しいものです。
それぞれに工夫があってこの島の魅力を大いに広げているように思います。
今回は79号線沿いにある、何度か訪れている「HANA cafe」にお邪魔しました。
お店の庭にある小さな動物園の増え続けるウサギのことが気になりながら、お料理と伊原間湾の美しさを満喫です。

 またこの時期、「サガリバナ」が話題でした(このコラム〔6〕にも書いています)。
時節柄と言えばそうなのですが、一斉に花咲くごとくにそこかしこで話題が沸騰です。
平久保川流域の群生地、そして嘉良川流域を中心とする大群落も見つかったとの紹介記事。
 私も今回「ペーブク(平久保)サガリバナ保存会」の群生地に出掛けてみました。
行ったのはお昼過ぎでしたから花は咲いていません。
しかし、それらの木々に夜咲く花を想像しながら、保存会の方々の熱い心意気をも感じていました。

 さて、石垣島の魅力は海・山が作り出す自然とその産物だけではありません。
人の創意工夫によって木や石や土などが魅力的な作品となって店先に並びます(今回は登野城の手芸雑貨店「てしごとや」。「器と雑貨の蓮屋hasuya」に立ち寄りました)。
ここに人の業、創作能力を育てるという文化的環境の確かさを感じます。
この地には「ウミドメ(海留め)」「ヤマドメ(山留め)」という習わしがあって、海や山の幸の収穫を控え、自然に任せることで、海や山の幸に大いに成長してもらうという生活の知恵がありますね。
 石垣島の魅力は自然にあることは間違いありません、しかし真の魅力はその中で営む「人」。
自然を生かすも殺すも人次第。
石垣島の魅力はそこに集まる人と自然が織りなす「共生」の魅力でもあると私は思うのですが。





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