八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.19


【掲載:2013/12/07】

音楽旅歩き 第19回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[交流の新たな一ページ]

 先月、11月21日から26日までスペインでの演奏旅行に行ってきました。
海外演奏はこれまでにもあるのですが、スペインでの演奏は初めてです。
以前から一度行ってみたかった国、しかし気候的にも地理的にも厳しいとのアドバイスがあって見送ってしまっていました。
 今回は秋のシーズンを選び、また演奏旅行の諸条件も整って、「名古屋ビクトリア合唱団」を率いて出かけることに。
訪れた地は世界遺産にも登録されているサラマンカ(古楽週間の一環「新サラマンカ大聖堂(Catedral Nueva)」)、アルカラ・デ・エナーレス(マヒストラル大聖堂)、そして首都マドリード(サン・イシドロ教会)。

 プログラムはスペイン生まれのT.L.de ビクトリア、そして今回の目的の一つである沖縄音楽、柴田南雄「追分節考」。
三日連続の演奏会は全てスタンディングオベーション(聴衆総立ちによる拍手)となる公演で終わったのですが、私の関心の一つはスペインでの沖縄音楽受容としてどのような反応を見せてくれるか、それが楽しみだったのですね。
 曲は、瑞慶覧尚子による女声合唱曲「宮古島のたより」から「多良間よ」「平安名のマチガマのアヤグ」、混声合唱曲「うっさ くわったい」から「月ぬ美しゃ」「上り口説」、三線とパーランクーを付けての演奏です。
彼の地で沖縄音楽が大聖堂で響いたのは歴史上初めてではないかと思うのですが(資料を全て調べたわけではないのですが)、それは最後のハーモニーが終わった途端ため息とともに盛大な拍手、それは大きな興味と関心を伴って受け入れられたとの確信です。

 日本とスペインとの繋がりは古く、戦国時代1549年に遡ります。
日本に初めてキリスト教を伝えるフランシスコ・ザビエル、その人です。
スペインが大帝国として君臨していた時代。
現在では内乱を経て民主体制への道を歩みはじめていて、不況が続いて不安定ながらも持ち前の陽気さ、明るさ、人好きなどが功を奏して今では観光立国となっているようです。
今回の訪れでも、会う人全て良い印象でしたね(お喋り好き、その語気の強さには少し驚かされましたが)。
 ルネサンス音楽最大の作曲家ビクトリアが生まれた国、そして最晩年に西洋音楽史に残す名作(「死者のためのミサ曲」)が書かれた地。
その地で彼の作品と日本音楽を歌う。
2013-2014年の「スペイン交流400周年」を期しての訪問演奏でもありました。沖縄音楽が鳴り響いたときの感動、そして心の底に感じた誇りは忘れがたくこれからも残ることでしょう。
演奏後の聴衆総勢によるスタンディングオベーションを見ながら、400年に続く交流の新たな一ページを開き得たのではないかと思っています。





戻る戻る ホームホーム 次へ次へ