八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.30


【掲載:2014/05/11】

音楽旅歩き 第30回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[音楽の歴史の中、私は今どの位置にいるか(5)]

 自分史を絡めて西欧音楽と八重山文化での私の立ち位置を明確にしたいとの思いでこのコラムを書いています。
八重山文化の重要さは知れば知るほど増していっています。
それを世界で、日本で、そして八重山に住む人々にこそ理解して頂きたいとの強い思いです。
ハインリッヒ・シュッツから始まった私の音楽史は楽器の王様、パイプオルガンによる西洋音楽の基層の響きのところまで来ました。
 今回は少し視点を変えて西洋音楽とは何か?を書いてみましょう。日本の音楽教育、音楽文化についても展望できると思います。

 我が国の音楽教育とは「近代西洋の芸術音楽」の学習です。
いわゆる「クラシック音楽」を学ぶことが目的となっています。
 「クラシック」とは日本では一般的に西洋の芸術音楽全般を示す言葉として使われているのですが、本来の意味は「古典派」と呼ばれる音楽様式の分類名。
ルネサンス、バロック、古典派、ロマン派、20世紀と学ぶ西洋音楽史の中で用いられる名です。
そしてここが重要なのですが、我が国では「クラシック」とは古典派とロマン派を意味するということです。
これらの時代はヨーロッパの市民階級の台頭(市民革命と産業革命)と期を同じくして、王侯貴族や教会に<雇われBGM係>として従事していた音楽家たちが独立を目指して街へと移り、聴衆の拡大と表現の自由を求めるために音楽愛好家を増やし、楽譜を出版し、多くのアマチュア音楽家を生み出した時期でした。
今日での音楽環境(音楽産業)の始まりです。
ではその古典派を代表する音楽家とは誰のことか?

 それはハイドン(宮廷音楽家)、モーツァルト(天才のメロディーメーカー)、ベートーヴェン(独立した音楽家)。
少し乱暴なまとめ方ですが、クラシックはこの3人(ウィーン古典派)によって始まったと言い切ってよいでしょう。
様式も、形態も革新的な進歩を遂げ、現代の音楽の基礎が築かれたのです。
社会背景も大事なので年代区分も大まかではありますが記しておきましょう。
ルネサンスが終わる1600年、バロック期となってそれが150年続きます。

 そして続く50年がクラシックと呼ばれる古典派で(市民階級の台頭)その後の100年間がロマン派です。
古典派の50年は短いです。
しかしその基礎の時代と、その上に花咲いたロマン派期は充実の時代で、我々がよく知る音楽家の名前がずらりと並びます。
 シューベルト、ショパン、リスト、シューマン、ブラームス、メンデルスゾーン、チャイコフスキーなどなど。
 学校で学ぶ音楽はこれらの作品が中心となっています。
唱歌や民謡(世界各国の民謡も含まれます)、ポピュラー音楽なども幅広く取り上げられようとはしているのですが、まだまだ我が国の音楽教育はいわゆる「クラシック」のみというのが実態です。
つまり学校で学ぶ音楽は「近代西洋の芸術音楽」史の二区分、古典派とロマン派、合わせてわずか200年間の音楽ということになるのです。
(この脇道の項つづきます)





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