八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.45


【掲載:2014/12/07】

音楽旅歩き 第45回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

[バッハの音楽を聴いてみませんか?(1)]

 バッハの音楽を勧めています。
バッハの名はどこかでお聞きになったことがあるかと思うのですが、その音楽を、私は人からマニアックと見られる程に聴くことを勧めるのですね。
勧める理由は日本人だからこそ聴いて欲しいと思うからです。
正直、この手の音楽は日本人は苦手だと思います。
彼の音楽の本質に迫る地盤をまだ構築できていないのではないかと感じるからです。
 その彼の本質とは、ポリフォニー〔polyphony〕ということになるのですが(複数の独立した声部からなる音楽様式)、つまりいくつもの旋律(メロディー)を同時に演奏することができ、聴き取り、そしてその全体(メロディーとリズム、そしてその重なりのハーモニー)を楽しむことです。
ポリフォニーとは?この様式を理解するためによく引き合いに出して説明される歌があります。
童謡の一種の遊び唄「かえるのうた」です。歌い出しを少し遅れて幾人かで歌えば「合唱(輪唱)」になるあの歌ですね。
 バッハの音楽はその完成版というべきもの。
メロディーが複数あり、複雑ではあるがとても音楽的という一級の芸術作品なんですね。
一つのメロディーをいろいろ繊細に変化させるのが得意な日本人なのですが(ごちゃ混ぜも好きですね)、
複数のメロディーを論理的に体系化して構築していくといったことは苦手です。
ですからバッハの音楽を聴くことは、脳の解析能力が増し、脳による平面的な思考が立体的な広がりを持って対処できるようになるというわけです。
「聴けば聴くほど頭が良くなるのです!」と。

 「一日、5分〜10分でいいから聴いてみましょう。最初は一つのメロディーしか聞こえないかもしれないですが、徐々に幾つかのメロディーが聞こえ始める筈です。もうそうなれば楽しくってしかたなくなりますよ」と、テレビショッピングばりの口上でお勧めしています。

 バッハは1685年3月生まれのドイツの演奏家兼作曲家。
一生を国内で過ごしたのですが、他国の音楽と統合し、西洋音楽の基礎を構築した「音楽の父」とも称されています。
亡くなったの1750年の7月。65歳の生涯でした。
彼が活躍した頃の日本は江戸時代、第5代将軍綱吉から第8代吉宗そして第9代家重の時代です。

 ちょっと想像してみていただけますか?バッハが弾いている姿を。
左手と右手はそれぞれ違ったメロディーを弾いています。
伴奏と歌(メロディー)ではありません、それぞれに違った歌を同時に別々の手で弾いています。
そしてそれが三つになり時には四つのメロディーにもなります。
これだけでも複雑なのですが、しかし彼が弾くオルガンはそれに足のメロディーが加わるのです!(足は一つのメロディーが多いですが)。
両手、両足によってそれぞれが奏される音楽。

 次回からその名曲をご紹介します。
聴くだけでも脳が活発化する。弾けば間違いなく脳が整理され、いわゆる賢くなっていくこと間違い無しです。
(この項つづきます)





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