八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.60


【掲載:2015/09/13(日)】

音楽旅歩き 第60回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【人の暮らしは響きの歴史(その6)】

 「可聴域」のことを前回書いたところで終わっていました。
人には音を聞くことのできる範囲があるということですね。
音楽のことを書く、つまり音(音響)について考えるとき、忘れてはならない問題がこの「可聴域」ですが、それについて慎重になる私です。

 慎重とは?人によって聞き取ることのできない「音」があり、「可聴域」と一般に言われている範囲内でも聞くことができない人がいる、ということ。
全ての人々が全ての音を問題なく聞いているわけではなく、聞こえ方が人によって異なっていることを忘れないでおこう、ということです。
 一般的に言えば、皆さんご存知の楽器、ピアノの鍵盤の一番低い音から右端の一番高い高音までは聞き取れるということになっています。
しかし、人によっては右端の三つか四つの音が聞こえないという方もいらっしゃる。人間は年齢を重ねるに従って高音(高い周波数)が聞こえなくなります。若いときに聞こえていた音が聞こえない!これは当人にとっては一大事です。音を聴く仕事に携わっている人がこの高音が聞こえなくなって仕事を辞めたということを伺ったことがあります。
 人は40代頃から徐々に高音が聞こえなくなっていくようです。勿論個々、遅い早いがありますがその傾向が強くなるそうです。
こういった聞こえない、あるいは聞こえにくい状態は「難聴」と呼ばれています。しかし、難聴にはいろいろなケース、要因がありますから一言でくくってしまうことがないようにと私は思っています。

 さて、人には聞くことのできる音の範囲があるとの今回のテーマでは、その可聴周波数を超えての音のことを書きたかったのですね。
それは、誰もが聴き取ることのできない音のことで、超低周波・超高周波(超音波)と呼ばれます。
 20ヘルツより低い音は私たちには聞こえません。しかしこの現代社会では多く聞こえていて人間に大きな影響を与えています。工場からのもの、車や鉄道からのもの、自然界からのもの、そしてそれらの低周波が一定以上の音圧を持ってしまうと、圧迫感や不安感、頭痛や不眠症、船酔いや車酔いに似た不快感、そして継続的に聞いていれば神経やホルモンのバランスを崩してしまうというものです。厄介なのはこの超低周波、家の中に居ても窓や壁を透過して来るのですね。これは対策の必要がある問題音です。
 相対する2万ヘルツより高い音、人が聞くことができない音は「超音波」と呼ばれています。この音、人体には無害で、様々に暮らしの中で取り入れられています。害虫退治、魚群探知機、病院での検査器機に治療器、溶着や溶接、洗浄機(眼鏡洗浄)、モーター(カメラのオートフォーカス)等々。
「超音波」は私たちの身近なところで使われ、現在も未来への研究、開発が進められています。超音波応用の分野では日本がトップレベルだそうです。
音楽(音)も工業も世界への超発信といきたいですね。
(この項続きます)





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