八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.65


【掲載:2015/11/29(日)】

音楽旅歩き 第65回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【人の暮らしは響きの歴史(その11)】

 大阪の北、私の部屋から見える箕面の山の色も冬支度し始めています。
景勝地として知られる「箕面の大滝」へつい最近行ってみたのですが、紅葉もクッキリと盛りを示しながら早々に冬の衣替えを始めているようにも見えました。(紅葉と共に有名な猿も姿は見えなくなっていましたね)
 ついでながらこの滝、「日本の滝百選」に選定されている落差33mの大滝。
その流れ落ちる滝の姿が、農具の「箕」に似ていることから、箕面滝と呼ばれるようになり、これが地名の由来であるといわれている名観光地です。
 この滝、騒動を起こしたことでも有名になりました。山に新しくトンネルが掘られた際に川の水量が減ってしまい、トンネル内に湧き出した水をポンプで汲み上げ還流している、つまり人工の滝だと言われたのです。
 自然環境保全と公共事業との軋轢(あつれき)、そして政治もからまっての騒動です。
今では市の説明によって、放水は滝から遠くはなれた場所にあって流水量の5%~10%程度であるとのこと。
だから滝は人工ではない、ということで落ち着いてはいるようですが。

 石垣島にも滝があるようですね。
「荒川の滝」と呼ばれる小さな滝があると聞きます。私はまだ行ったことがないのでその様子はわからないのですが。どのような水の響きがしているのでしょう。今度行ってみようと思います。
落差や勢いの違いがあっても水が流れ落ちるのは迫力があります。私はその音に惹かれてしまいます。
何故でしょう? 水の粒子というのでしょうか、それらの飛沫(しぶき)の動きに魅了され、それに伴って発生する音が心を揺さぶるのですね。山を分け、大地を削ってくねりながら進む川。そして上流、地形によっては下流にも大地と抗うように姿を現わす滝。
私はその様相に人生の流れを重ね、そこで発せられる音を聴こうとしているのだろうと思います。
川も滝も、普段は穏やかさを示してはいますが、時として、怒りの音を轟かせながら吠える川、これほど恐ろしいものはありません。その時の川は、滝は・・・凄まじい!

 話は戻ります。
一気に冬へと突入する内地。石垣島も秋が去り冬の風が吹き始めている頃でしょうか。
早く訪れたいと思っているのですが、なかなか時間が取れず地団駄踏んでいます。
季節が変わりゆく頃、つい感傷的になってしまいますね。
響きづくり、音楽づくりは人を取り巻くその季節感に大きく左右されます。
温度、色彩、匂い、触感全てに「人」と関わる存在が示されているからですね。

 箕面の滝、その中に一部人工的な要素が含まれているからといって自然の滝の音ではないとは言えません。
これからも私たちが驚くような、人工的なものも含まれた、作られた「自然の響き」が多くなることでしょう。
さてその時、私たちの心の中に浮かぶ思いは自然が織りなすものと異なることになるのかどうか?
自然の風景と違って、音の響きは少し厄介です。
(この項続きます)





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