八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.76


【掲載:2016/05/01(日)】

音楽旅歩き 第76回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【合唱の響き、面白さを体験してみて下さい】

 このコラムのタイトルは「音楽旅歩き」です。
私が訪れた土地の感想など、音楽の演奏と共に綴りたいとの思いで始まりました。
しかし、実際は石垣島についての感想や意見、そして私自身の思いなどを書くに留まっていたと言っていいでしょう。
演奏を通してこの石垣島での感想が書けなかったのがずっと心に引っかかっていました。
大阪や京都や名古屋、東京、そして海外などでの多くの演奏の思いを書いたとしてもそれはどこか遠くの出来事のようで終わってしまいます。
早く、この石垣島での演奏を通じての感想を書きたかった、それが本音です。

 私にはオーケストラのメンバーや合唱団のメンバーがいます。
そのメンバーと共に音楽活動を行っています。
一人で旅をするのは気楽です。数人のメンバーと共に過ごすこともある意味気楽なものです。
そのメンバーと共に演奏をするのも、そう難しいことではないでしょう。
しかし、本格的に演奏に取り組もうと思えば数人のメンバーだけでは最良のものを伝えるということはやはり難しいと思うのですね。
かといって、通常の沢山のメンバーを連れてくるには費用の面でも、スケジュール調整の面でも困難を伴います。
また、受け入れ側における日程の調整や演奏する場の確保、集客なども考えると益々、そのハードルは高いものになってしまうのですね。
思いは募っても、多くの条件が整わなくては、思いだけではことは成し得ない、いつものジレンマが横たわります。

 「海に潜りたい」との動機で始まった石垣島への訪れ。
それがいつしかこの地で「私の音楽」を奏でてみたいと思い始めていたのは自然の流れだったのでしょう。島の方々との一層の交流です。
私は音楽はコミュニケーションだと思っています。
この島の人たちと、言葉だけでなく音楽でもコミュニケーションを取りたいと強く願い始めていたのですね。
人間には言葉では言い尽くせない世界があります。
言葉になったとたん、それは既に違った意味にもなってしまうことがあります。
「今」を伝える、言葉を超えた思い、それが音楽です。
その音楽で互いが交わりたいと願うのです。

 ふとしたきっかけでその機会が早くやって来ました。
まぁ私の思いが私が意識する以上に脹らんでいたから、とも言えなくはないのですが、今回私の合唱団で演奏する機会をこの石垣島で持つことに至りました。
 それは来月の6月23日「慰霊の日」に「ホテル日航八重山」での演奏です。
合唱団として全員ではないのですが、合唱団の主力メンバーが賛意を示してくれての参加です。
これによって石垣島の方々に〈合唱の響き、面白さ〉を伝えられるのではないかと嬉しく思っています。
今回のコラム、宣伝のようになってしまったかもしれません。
しかし、このコラムで綴ってきたことを言葉でなく体験していただける機会になるのではとの強い思いのためとお許しいただければ幸いです。
音楽が持つ力、それを信じて演奏したいと思います。





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