八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.77


【掲載:2016/06/05(日)】

音楽旅歩き 第77回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【人の暮らしは響きの歴史(その20)[合唱とは?]】

 今回、初めて私の合唱団がこの石垣島で演奏の機会を持つことができました。
このコラムで「響」のことを書いてきたものを一部なりとも体験していただくことができることを嬉しく思っています。
ということで、今回は「合唱」のことをまとめて書いてみようと思います。
 まずは合唱とは何かということから始めましょうか。
一人で歌うのではなく、複数で歌うのが合唱。
基準になる合唱の形態で言えば、女声の高い声を出すソプラノ、その次に低い声で歌うアルト、男声も高い声のテノール、そして低い声のバスとに分けて、合わせて四声部で歌われるのが基本です。
 それぞれの声部には役割があって、ソプラノはメロディを担当。ただ、作曲された時代や様式によっては全部の声部に役割が与えられていて、全ての声部を聴くことを前提にした曲があり、そういった曲は歌う側も聴く側も少しは訓練が必要になるかもしれません。
この四声の基準、比較的最近のものです。歴史的に見れば最初、合唱には女声が入っておらず、全て男声のみで歌われていますね。
高い声も、低い声も男声のみです(教会音楽の中で整えられたものだからです)。
ソプラノの役割を受ける声部も男声で、日本で言うところの裏声で歌われます(このソプラノ、古くは実は残忍なことでしたが、イタリアでは少年の声を保持するために変声期以前に去勢した、カストラートと呼ばれる専門の男性歌手によって歌われていました。
後には子供にとって代わられ、あるいは先に書いた裏声を用いた大人の男性で歌われましたが)つまり合唱は、最初は男声として、そして後に女声が入ってきた、ということです。

 合唱の真髄は何と言ってもハーモニーでしょう。宇宙の原理に沿った美しい響を全ての合唱は目標とします。一人では表しえない響を数人によって表わそうとするのですね。
そしてその次の魅力は、全声部の動き、個性を見ることです。
ソプラノのメロディだけでなく、全ての声部がどのような関係で動いているかを楽しむことです。
勿論、歌い手がどのような気持ちをもって歌詞を歌っているかというのは当然のことですが。
これで全てです。合唱の魅力はこの事柄だけです。後は実際に聴きながらそれらを楽しむだけです。
 その後の形態の変化についても書いておきましょうか。
合唱は男女による4声部が基本なのですが、それを分けての形が生まれます。女声合唱がそうですし、少年少女による合唱もその仲間の一つです。
これらは高音の響による合唱です。音楽的には低い響が欲しくなる時が出て来るのですが、それはピアノ伴奏が引き受けることで満たしています。
また男声による合唱でも少々マニアックな「バーバーショップ」と呼ばれる形態、ハーモニーもあります。
この形態ではメロディは一番高い声部でなく、2番目に高い声部が受け持ちます。それによって独特な響となり男声的な魅力を大いに発揮するのですね。
合唱の魅力、奥深いです。





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