八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.85


【掲載:2016/10/09(日)】

音楽旅歩き 第85回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【富山再訪 魚と酒もまた美味し】

 富山県のことを以前書きました。
当地の「バッハアンサンブル富山」という、J.S.バッハの音楽を富山県に根付かせようとの意図の元に作られた音楽団体の依頼で訪れたことです。
その第二回目の練習(J.S.バッハ作曲「ロ短調ミサ」)のために再訪です。
 前回は東京から移動しました。一度乗ってみたかった北陸新幹線、トンネルが多いために景色を楽しむことはできないのですが、列車の素敵な色調と美しい流線型フォルム、そして列車内の内装や乗り心地を体験することができました。
しかし今回は大阪からの移動となったのですが、東京からとは違ってこちらはどうも私には良くありません。
先ずその経路が合いません。京都まではまぁ良いとして、その先が列車の横揺れがひどくて体が疲れるのです。
その揺れのために車中での原稿書きや、読書が気持ち良くできません。それならばと、そのことは諦めてひたすら最近の寝不足を補うために寝ることに。
しかし、揺れが眠りも深くしてくれません。
サンダーバードと名付けられた列車で行くのですが、終着駅の金沢駅まで約二時間四〇分、これは少しきついですし、その後北陸新幹線に乗り換えて富山まで更に約二〇分。
この行程は移動に覚悟を要求される私にとっては少々困った小旅行なんですね。
この小旅行を敢行できるのは、もちろん控えている音楽練習も楽しみなのですが、もう一つの楽しみ、富山での名産、名物料理があるからですね。
日本海で捕れる魚や地元の料理、そして酒所として有名な日本酒が飲めることを期待するからです。
今では全国に広まった鱒寿司、くすりの町にふさわしい「富山薬膳」、かまぼこもまた有名です。
これらを「肴(あて)」にして飲む日本酒は、当地に行ってだけ飲める酒があったりして興味が尽きません。
 沖縄にはその料理にあった泡盛がありますね。今では全国で飲めるようになりましたが、中には流通していない、その土地でしか飲めない泡盛もあります。
それと同じように、本土には本土各地の料理に合った日本酒が沢山あるわけです。
今回も地元の人に伺って飲んだ酒を堪能しました。やはり料理に合った美味し酒でした。
音楽は「食」と深い関係にあると思います。食が音楽を生み育て、音楽がまた食を作っていきます。美味しい料理にはそれに似合う音楽もあるということですね。
バッハの音楽を振りに行く私が言うのも変ですが、今回の演奏会、バッハが生活に合うもの、似つかわしいものとして富山に根付くのか、それを試みる大切な演奏会だとの位置づけで出掛けています。
集まって来ている合唱団員は富山県とその隣県から来るバッハ愛好家たち。
本当に真摯に、そして熱心に取り組んでいます。
来年3月に予定しているロ短調ミサの演奏会にはこの地にバッハの音楽の楽しさ、西洋文化の知の深さを知っていただこうとの強い思いで臨むのですが、その演奏の成果が次へと繋がるかどうかなのですね。
今度訪れる時、富山が一層近づいているとの予感です。





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