八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.87


【掲載:2016/11/13(日)】

音楽旅歩き 第87回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【本土から石垣島に思いを馳(は)せる】

 先月末から胃痛が始まり少し動きが鈍くなっていました。
思考停止とはいかないまでも、集中力が落ちてしまいました。
練習にも影響がありましたし、幾つかの原稿書きの遅れも生じ、正直焦りました。
 その流れの中での東京の合唱団の演奏会。大阪からの移動や練習時、そして本番と、色々と気に掛けることが多くなり、また胃痛のために思うように食べられないといったことによる体力の消耗。少しめげた期間となってしまいました。
この胃痛、過密スケジュール故のストレスが原因。
解ってはいるのですが、なかなか解消されない私の問題です。

 さて、今回はその東京へ行った折に浮かぶ石垣島事情への「思い」を綴ろうと思います。
演奏会のことではありません。以前から我が脳裏に浮かんでくるある引っかかりというか、心配というか、憂いです。
これまで書いてきたようにも思うのですが、私の仕事の大切な部分にコミュニケーションをどう取るか?があります。
練習時がそのための最も重要な時間であることは間違いないのですが、「飲み会」もまた大切な時間です。
 人って、食べたり飲んだりしている時に本来の姿を見せるものです。
その仕草や語りに一層その人そのものが表れます。そこで培われた信頼が「音楽づくり」の確信へと繋がります。
そういった場ですから、その場、つまり店も大事ということになります。

 やっと本題に辿り着きました。今回はその「店」の話です。
大阪にも、東京にも、また行く先々の都市や町などで随分と「沖縄料理」に出逢えるようになりました。
出逢えれば喜び勇んで入るのですが、実は本土の経営であったり料理を作る人も本土の人であったりすることが多いです。
味も本土化されたもの、と私には思われます。
しかしそのことに目くじらを立てているわけではありません。
その店の雰囲気の中に「沖縄らしさ」を感じないことが多いことに引っかかりを覚えるのです。
実はあまり沖縄を慈しんではいないのではないかとの心の引っかかりです。
 東京で入ったある沖縄料理店。料理も店員の接客も感じ良いもので、行った者同士で「良い店に出逢えて良かったね」との会話。
聴いてみれば石垣にお店を出すとのこと。チェーン店のようなのですが、また本土のお店が一つ増える。
これは石垣島にとって良いことなのか、それとも…。音楽も含めて島は島の文化を大切にする、ということが大事です。
地元でなく他の地からの移住だとしても、いや、だからこそその土地の、その島の文化を育てることに関与することが重要となります。
文化を根っことした地場産業をどう育成、発展させていくか。
石垣島の文化が知られ、音楽を含め島の物産が全国に広まることに心底から喜びを感じます。
私もその一端を担いたいとの思いです。
だからこそでしょうか、島への進出、人や組織が島に入ることを熟慮します。
役立ちたい、しかしやみくもに他文化を押しつけることであってはならない。
東京で出会った店の島への出店、どうかそのことに叶いますように。





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