八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.95


【掲載:2017/04/09(日)】

音楽旅歩き 第95回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

【岡山県「池田動物園」を訪れる】

 先月末、岡山県を訪れました。仕事ではなく幼い頃日々を過ごした地へ行ってみたくなったからです。
大阪から近く、新幹線で行けば45分。日帰りで観光ということもできる距離。
以前は我がルーツ巡りの一環としても何度も訪れているのですが、今回は休みを取ることができたので「岡山」での休暇を楽しみたいとの軽い気持ちで又々出掛けたというわけです。
美味しい魚を食べ、銘酒揃いの店でゆったりと過ごす、それが目的でした。
しかし、やはり幼かった頃の父親との想い出、そして惜しまれつつ昨年2月に亡くなってしまった人気者のインドゾウ、メリーの飼育舎の存在も気になり、行ってみることに。
 入った時に驚いたのはまず、以前行ったときよりも園全体に活気があるように見えたこと。
年齢層も幅があり、入園者も多く感じます。
そして飼育係のサービスが特に目を惹きましたね。サービスが良いし活き活きしている様も伝わってきます。
「何か雰囲気が変わった⁉」、それが今回行った印象でした。
後で判ったのですが、この動物園が存亡の危機にあるというのです。当地の新聞がそのことを記事にしています。

 内容はこうです。『天皇陛下の実姉、池田厚子さん(86)が園長を務める岡山市北区の「池田動物園」が存亡の危機にある。
そもそもこの動物園は池田厚子さんの夫、旧岡山藩主池田家の16代目当主の池田隆政氏(平成24年死去)によって創設された。
しかし、施設の老朽化、維持管理、入園者のある時期におこった減少化。
赤字経営になってからは池田家が私財で穴埋めをしている。
市民らが公営化による経営の安定を求めて署名活動を展開し、6万人以上の署名を市に提出。
だが様々な要因が重なって厳しい。その一つ、市民から人気者であった象のメリーの後として「いずれは再びゾウを」と望む声が挙がったが、ワシントン条約の規制強化によってその実現は困難な状況。市民の憩いの場、伝統の園は存続できるのか。』

 幼い頃父親に肩車してもらって訪れた想い出の施設がなくなるかもしれない?ちょっとショックでした。
でも前述しましたが、園の雰囲気はとても良く、少し空きのオリが多くなって寂しくなったかなとの印象も持ちましたが、飼育係の人たちが向ける動物や入園者に対する目線、誠実な動き、優しさは少しも不安を感じさせることなく、むしろ活気を帯びていて心配など払拭されたのでした。
 こういった施設の経営は何処にあっても難しいでしょう。
それも公的ではなく私的に運営しているって余程の体制でないと出来ない事です。
特に動物を扱う、動物園や水族館など維持管理するためには膨大な費用がかかり、また、そこで働く優秀な専門的知識をもった人材やそれを補佐するスタッフたちも必要。
どう想像しても予算は脹らむばかりです。
でも、その困難なことを乗り越えて作る意味は大きいと思いますね。
そこで学ぶのは生き物の生態だけではなく、働く人々を含めた全ての「命」の「愛おしさ」や「尊さ」なのですから。





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