八重山日報コラム

「音楽旅歩き」No.122


【掲載:2018/07/24(火)】

音楽旅歩き 第122回

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者  当間修一

「自由」という規律ある仕事環境

 本土は暑い日が続いています。
毎日のように「熱中症」によって病院に子どもたちや高齢者が搬送されたニュースが流れます。
私の周りでも友人の家族や知人が家の中で「熱中症」に倒れたとの話も聞きました。
日中は40度に近く、またそれを超える猛暑。
高熱に慣れない地で住む人々にとってはとても大変なこと。
なかなか対策を取る人も少なく、経験的に甘く考えている人が多いかも知れません。
最近の痛々しい話。
盛んに注意報や警告が出ているにもかかわらず学校の運動場など野外で生徒に活動をさせ、結果、救急車で運ばれた、というニュースが流れたときは何とも言えず胸が締め付けられる思いでした。
先日の地震に続いての大雨、そして土砂災害。
これらの原因と考えられる地球上の気温の上昇は、一過性のものなのでしょうか、それとも暫くは続くかも知れない異常な状態、周期性のものなのか?
なかなか実態がつかめないでいる不安な最近です。

 さて、話は変わるのですが、私は仕事柄自宅で過ごすことが多いです。
朝、満員電車に乗り、会社や仕事場での緊張感のある時間を過ごした後、帰りも満員電車で帰宅するといった〈往復だけでも疲れる〉通勤というものがありません。
外の猛烈な暑さのなか長時間居ることもなく、自宅での仕事。室内は26度に保たれてそれぞれの部屋で過ごす快適さ。
その中で、楽譜を読む、参考資料を読む、原稿を書く、など机やピアノを前にしての仕事環境です。
やや涼しくなる夕方頃に仕事を終え、そこから出掛ける準備をし、日没頃には家を出て練習場へと向かうのですから、サラリーマンの皆さんとは逆の生活時間帯での活動です。
午前と午後は仕事するというのは同じ。
違う事と言えば、仕事の後に私の「本来の仕事」が待っている、ということでしょうか。
仕事後の楽しみとしている仲間との「宴」や「打ち上げ」も、皆さんがお帰りになる頃に始まります。
そして帰宅も、寝る時間も遅くなってしまいます。音楽家という「自由業」、どう見ても不健康な生活。
真夜中の夢の中でも仕事をしてしまう24時間勤務の感覚です。(中にはしっかりと健康的に音楽業に勤(いそ)しむ方もいらっしゃいます!)
朝は何時からでも仕事を始められる。
一旦始めれば、誰もそれを見ている人が居ないなかで作業する。
そして就業時間の終わりは有って無いようなもの。
「自由」というのは楽(らく)なのか、そうじゃなく辛いものか。
メリハリのない24時間という日も時にあるにはありますが、自由業の人間にとって大事な事が一つあるのですね。
それは自身で作る〔規律〕です。
その規律を作り、守らなくては良い仕事はできません。
その厳しさは必要ですね。
私はそう思って60年近くその生活を続けています。
日々好きなことを仕事にしているとはいえ、だからこそ疎(おろそ)かにしてはならない。
そう戒(いまし)めています。
地球全体の環境が変わりつつあったとしても私の仕事環境はこれからも変わりそうにはないですね。





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