'97/3/16
最後となった作品「無限曠野」。柴田先生はとんでもない曲を残されました。私たちに忘れがたい印象を残してしまう<重い重い曲>を残されて天上へと去っていかれました。 '97/3/16「演奏会に来て下さる方はご注意を」終わり
合宿を終えました。
柴田南雄「無限曠野」を練習するための合宿でした。
本来ならば公表は差し控えて置いた方がいいかなとも思うんですが。
しかし、私のこの性格ではダメなんですね。
ついしゃべってしまうんです。
全体の解説は別の所でします。
が、今日はちょっとその概要を書いてしまうんです。
演奏会に来て下さる方にご注意(大袈裟ですね)申し上げようと思うからなんです。
それはどうしてかというとです。
恐がって、お逃げになられると困るからです。
あるいは、失礼な奴等だと思われないためにちょっと心の準備をお願いしたいからなんです。
前置きはこのぐらいにして。
この「無限曠野」の全体を貫く主題は<二度とこの世に戻ることのできなかった者の哀しさ>です。
と、まぁこういうわけです。
太陽を取り戻した勇士たちが星となって二度と地上に戻れなかった話。
一見、母親の優しい子守歌。しかし、わが子を戦いに、戦場に送り出す母の姿が哀しい。
名をベストゥージェフというデカブリストが流刑地で書いた詩で、祖国への思い、自らの心情を雲に託して読む。
曲の中心となるこの第四曲。詩は、辺見じゅん著/文春文庫「収容所から来た遺書」から取られている。
労役を終え、故郷に戻る道すがら、父母や妻を目前にして哀しく死んでいった者への挽歌
ただし、ここに歌われている詩は検閲のために削除されていたもの。柴田夫人が探し出され、幻となっていた詩を年月を経て今ここに詠われるものです。
再び祖国に帰ることのできなかった兵士達の行進を幻視する作者。柴田南雄はそこに戦争の、戦いの空しさへの怒りを読んだのです。
そしてですね。ご注意もうし上げたい箇所はですね、やはり最後の曲なんです。
合唱団員が突然(でもないですが)客席に降り、皆さんの席の間近まで行って語ります。その時、どうかお逃げにならないで頂きたいのです。
私の演出はここにポイントがあります。
戦いの空しさを訴えるその言葉を、そのメッセージを受け取って頂き、帰らなかった者の哀しさを伝えて欲しい!という意図なんです。
この合宿で演出の基本構想はできあがりました。
その後の経過はまた報告します。
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