No.161 '98/7/26

宝塚室内合唱コンクール


24日の前夜祭に続いて、昨日25日「宝塚室内合唱コンクール」がありました。
なかなかの盛り上がりを見せていたと思います。
私が審査の打ち合わせため、24日に宝塚の駅に着いたのが待ち合わせの時間の30分前、そこで宝塚が久ぷりだったので駅周辺を歩きました。
随分変わっていましたね。
きれいになっています。
特設会場でのコンクール出場者による演奏が終わったようで、合唱団のメンバーたちが買い物をしていました。
これなど、ちょっとした国際都市のような雰囲気でしたね。

さて昨日の「コンクール」の感想を書きましょう。
午前の「女声合唱」

レベルが高かったです。
審査に困りました。
こうなれば、微妙なところで審査員の好みも入ってくるだろうな、と思いながらメモを取っていました。
しかし、各審査員が提出した結果をみるとだいたい似通っていましたね。
少しのばらつきがありましたが、上位に関しては一致していたと思います。
ここで審査員を唖然とさせることが起こりました。
なかなか良い演奏を聴かせてくれた2つの団体によるタイムオーバーがあり、審査対象から除外されたことです。
その中にロシアから参加した団体もあり、その演奏がすばらしかっただけに審査員もがっかりしましたね。

記憶に残った団体を書いておきます。
残念ながら1位を逃しましたが(私は1位をつけました)、三重からきた「Accord〔EST〕」が印象に強く残りました。
Altがもう少し厚い響きがあればと思いましたが、この団体の音楽表現の繊細かつ優美さにおいて先ず耳が引き寄せられました。
音の処理、特にdimが巧かったですね。感心しました。
その他に「潮の音」。ここは日本語がハッキリと聞き取れ、澄んだ響きと音楽性がよくマッチしていました。「浜田少年少女合唱団」在団生とOGによる響きの美しさに驚きました。それは豊潤であり、力強くもありました。審査員も強く印象に残ったようです。(私はそのことを認めながらも、実は在団生のもっと生き生きした歌声を期待したかったですね)
1位になった台湾からの合唱団「長庚室内合唱団」(Chan Gung Chamber Choir)はやはり1位を取るだけの実力ある合唱団でした。 ただ私はちょっとコンクールなれ?を感じましたが。

男声合唱の部
アプローチの面白さでは「〔EST〕メンズクワイヤー」ですね。ソロのお二方のキャラクターの違いがなかなか面白かったですよ。
「ENSEMBLE PLEIADE」はこれからが楽しみな団体と私には映りました。
テナーソロのハイトーンなかなか立派でした。
「広島市役所合唱団練習時間を取るのが大変でしょうね。しかし、誠実さを感じる演奏ではありました。ただ表現に私は一本調子を感じたのですが・・・・。
「なにわコラリアーズ」少し暗めのトーンが気になるのですが、良くも悪くもグリー的なものを感じさせる団体ですね。
ちょっと細かいところまで聴くと、ハモリにムラがあったり、団員にもレベルの差があり、声に張りがない(暗い印象はここから来るかもしれません)箇所などあるのですが、でも様式と言いますか、出来上がっている評価なんでしょうね。
でも、審査員の統一した意見だと思うのですが、この男声合唱の部では「金」無しというのが全体の中での評価をよく表していると思います。
「室内合唱」とは何かを、一度考えたいですね。

混声合唱です。
これは悩みました。
女声合唱はレベルの高さで評価に困難さを覚えました。
混声合唱は逆、レベルがまちまち、差があることによって評価を出すのが苦しかったです。
レベルがもう少し上がればいいですね。先にも言いました「室内合唱」とは?というところでしょうか。
しかし、書いておかなければなりません。
この「宝塚室内合唱コンクール」を聴くのは私、初めてでした。
皆巧くなりましたね。ハモルこと。アンサンブル。声質。リズム感。どれをとっても上手く、洗練されたものでした。
このことは高く評価できると思います。
印象に残った団を書きます。
「廣青合唱団」(Kuang ching chorus)これは感動しましたね。身体障害者とボランティアによって構成されたこの団から発せられる響きは健常者たちによるものと何ら差がありません。いやむしろより声量も大きく、また豊かなハーモニー、緻密なアンサンブルでした。最後に歌われた自国の古謡は聴かせましたね。心を込めて歌うことのできる歌を持っていることが羨ましかったです。
1位を取った「Muzika」はリトアニアからきた合唱団。その洗練された声、ハーモニー、アンサンブルはやはり大したものでした。各バランスの良さも特筆でしょう。しかし、演奏時間を気にしてのことか落ち着きのないテンポや曲間は少し辛いものがありましたね。そしてバッハのモテトでの「フーガ」の入りの前で音取りをしたのには驚きました。これはすべきではありませんね。ということで実は私の評価は厳しいものになりました。
私は4位をつけています。

全体として感想を。
「日本の特徴」と言ってしまえばそれまでなのですが。
日本の出場団体の多くはトーンが「暗い」ですね。
私はこの暗いトーンには低い評価をすることにしました。
つまり発声なのですが、皆さんこの「暗いトーン」の団体は一様に声のあたる場所が低いんです。「口」「鼻下」なんです。
これでは明るい響きにはなりませんね。明るい響きになればハーモニーも澄んできますし、言葉もハッキリするんです。
因みに、今回参加した海外からの4つの合唱団は明るい響きが特徴です。
声のあたる場所の基本が「額」や「目と目の間」なんですね。
ここのところが皆さん気づかれていないのでしょうが、大切なことだと思うんですね。
また全体に言えることなのですが。
選曲が偏ってしまっているのでしょうか、あるいは響き、歌わせ方が似通っているせいなのでしょうか。個性がない演奏が多かったように思うのです。
「課題曲」の連続のように聞こえました。
「楽しく聴かせる演奏」もあればと思いましたね。

審査に少しのばらつきがあったとはいえ、納得のいく結果だと思っています。
Bruno Turner氏と私の評価が3部門とも似通っていたのが印象的でした。
出場された方々「お疲れでした」
これからも合唱を楽しみとして活動してもらいたいと思います。
いつもコンクールなどの審査をして思うのですが、やはりこれは「水物」なんですね。評価をつけるなんて難しいです。
「音楽の本質」を忘れず、楽しみましょう!

No.161 '98/7/26「宝塚室内合唱コンクール」終わり