No.208 '99/5/8

「野田」演劇に感激!


昨夜、NODA・MAP を観てきました。

NODA・MAP第六回公演「半神」です。(近鉄劇場)
不思議な世界ですね。
独特の味わいがあります。
蜷川幸雄演出のことは今までにも書いてきましたが、野田秀樹の舞台を観るのは初めてでした。
興味ある人でしたから、噂に聴く舞台を観るのが楽しみでした。
想像以上というか、まことに不思議な舞台空間でしたね。

何度か泣いてしまいました。
最後の場面ではほんとに感激でした。
また、自然に笑ったり(不意の笑いとでもいうのでしょうか)、拍手も気が付いたときには していたりと、初体験の私自身の反応でした。(自然に体が動いていたのです)

台詞の速さ、これはまるで機関銃のようです。しかしリズミックですからただその音(おん)を聴いているだけで楽しく、そして確かな感情が伝わります。
また、その発声が面白い。あらゆる<声質>を駆使して語るものですから、耳が喜んでそれを追います。
頭声から胸声まで、大声から小声まで、そして驚くべきことに声を長く伸ばす場面が何カ所かあるんですが、その声の何と魅力的で効果的であったことか!
そして驚いたことに、演じている人たちがピアノを弾き、そして見事なハモリまで聴かせるのです!
照明、音響とのリズムも見事。その自然な転換とアンサンブルの良さは際だっていました。

総勢12名。その動きに無駄はありません。
2時間を動き回ります。
殆ど体操選手のようです。飛んだりはねたり、舞台中を走り回りながら喋ります。
そしてそれらの動きの<緩急>は緻密に計算され、舞台全体を通して緩慢さを感じさせることはないのです。実に巧妙です。
舞台始まりと終わりは動きと台詞によって関係付けられ、その演出構成はシンメトリック。これが不思議と我々の感性に強い印象を与える要素になっていました。
使い古された、あるいは陳腐にさえなるこの手法がこんなに生き生きと私の胸に迫ってくるとは。

実に不思議な体験でした。
体の動きに感じ、喋りに感じ、(筋立てではなく)人間の根元の感性をくすぐられるというか、刺激されるというか、何とも不思議でした。

でもこの世界って「音楽」と一緒だと思いますね。
私はこの舞台を「音楽」と感じました。
彼らが喋る台詞は「音楽」でした。
彼らの伸ばす叫びは「音」そのものでした。
動きは「リズム」、役者のからみは「アンサンブル」でした。
そして私はそれらに揺り動かされ、涙したのでした。
理屈ではありません。
感じることが始めであり、意識する間もなく感動していたのです。

お客さんは超満員。そして若者が多い。原作が漫画であるせいもあるかもしれませんが、私にはこの感性が若者に受け入れられるのだと思いましたね。
野田秀樹 という人、すごい人でした。
また是非体験したいと思う忘れられない一夜となったんです。

No.208 '99/5/8「<野田>演劇に感激!」終わり