No.383 '01/9/3

第二日目の神奈川県合唱コンクール


二日目は一般部門とシード団体の演奏です。
感想を書いておきます。

一般部門(Aグループ)
■コールウィア(女声13)
課題曲での暗い発声が気になりました。声に芯がないというのはちょっと私には辛いのですね。
ソプラノのcやdでの声のチェンジが全体のハーモニーの中で目立ってしまいました。Gloriaからの押した声でのフォルテはやはり響きも痩せてしまい全体の響きの豊かさが無くなってしまいます。
自由曲でもそれが全面に出てきてしまいました。和音が立たない、これは声の立ち上がりが鈍くなるからですね。そのためにハーモニーも決まりません。各パートの響きの作り方がバラバラのように感じました。日本語ってもっと私は明るいと思うのですが。
■フルーリックス(女声16)
(銀)響きは明るく、芯もあり力強いハーモニーでした。ソプラノに若干の発声上のばらつきは感じたものの、ハーモニー作りのバランスも良く、特にアルトの芯のある太い声が私には印象的に耳に残っています。最後のハーモニーも決まりましたね。
しかし、欲をいうならば自由曲での演奏がもっと音色の変化があり、言葉の抑揚、フレーズでの音の方向性などがでてくればいいのではないでしょうか。
■合唱団リベルテ(混声20)
(銀)私は感心しました。
声の芯がない、やや響きが暗いのが気になりますが、曲の要点を見事におさえたいい演奏だったと思います。
ペルトのマニフィカトは女声の明るい音のきしみが感じられましたし(その点、男声は少し暗いですね)、伸びもありました。
後半の力強い響きから最弱音の声へのコントロールも良かったと思いました。
曲の内容をよく把握した演奏だったと私は思いました。
■クール・ミルフィーユ(女声12)
(銅)楽譜を持って歌われました。(もちろん暗譜された方もいらっしゃいましたが)
私はどちらかというと楽譜を持って歌っても良いと考える指揮者です。「楽譜を見た」ということで私の点数が辛くなったわけではありませんので念のため。
私の評価は実は高かったのです。(私は3位をつけました)
ちょっとsolo的なのですが、ソプラノとアルトに聴かれた芯があり、伸びもある声に魅力を感じました。そのために全体のハーモニーも明るく響き魅力的なものになっていのではないかと思います。
それにアンサンブルにも乱れが無く、フォルテからピアノまで均一なハーモニーとなって聞こえてきたのですね。なかなかの互いに聴きあえる耳のある合唱団だと思いました。
ただ、後でも書くことになると思うのですが、指揮者の振りと、出てくる音楽に若干の違和感をもってしまいました。
結果としては良かったという判断だったのですが、何て言いますか、指揮者を見ていてギリギリの線、という感じがするのです。(ちょっと意味不明ですかね)
■アンサンブル・ピノ(女声18)
(銀)柔らかい大人の響きのする合唱団ですね。
課題曲が少しカラッとした仕上がりです。テンポが速かったせいでしょうか?フレーズの終わりが暗く、響きも落ちます。最後のハーモニーも決まらなかったですね。
自由曲のブストになってからは少しは良くなったものの、後半になるほど乱れも生じ、落ちた響き、暗いフレーズの終わりとなっていきます。書くのは辛いのですが、ブストさんの曲って私には物足りなく聞こえるんですね。もっと音楽的な変化が欲しいと思ってしまいます。
ブストさんの魅力を浮き彫りにするような演奏が早く聴きたいものだ、そう思いながら聴いていました。
■合唱団プレアンブルム(混声18)
ウーン、こういうのを評価するのは難しいです。
課題曲での演奏、それはポリフォニーの魅力です。次々と出てくる各パートの入りは大事です。そして声の重なりがハーモニーとなっていきます。その面白さが伝わってこないのですね。
自由曲でも困りました。途中でピアノが入ってくるのですが、これがハモらないのですね。融合しないまま平行線をたどって合唱とピアノは進行していきます。これは合唱団の響きづくりが独り歩きをしているからかもしれないと思ってしまいました。
合唱にとって倍音の知識は不可欠です。どうか響きづくりをもう一度試みられることをお薦めします。(すみません。ちょっときつくなってしまったかもしれません。もしこれを見てご意見がありましたら、どうぞお送り下さい。)
■並木男声合唱団(男声32)
声のかぶさり、混沌としたハーモニー、高音と低音の響きの分離、各パートのピッチのズレ、これはもう往年の男声合唱団の響きのイメージです。
しかし、しかしです。私は大いにこの合唱団に魅力を感じたのですね。
何故かと言えば、それはもう皆さんホントに歌をうたってらっしゃるんですもの。
コンクールとなるとちょっと基準を違えないと現代では通じなくなってしまっているのが残念です。
どうかその「我が道を行く」を貫いて、音楽の楽しさを伝えてください。理屈抜きで楽しかったです。
私も応援したいですね。
■女声合唱団グリーン・フラッシュ(女声17)
(銅)声の出が遅く重い。全体に暗い響きですね。フレーズの終わりも落ちてしまいます。
とにかく「重い」というのが感想でした。ここでも指揮者とのズレを感じたのですね。
■男声合唱団「グリーンスリーヴス」(男声12)
ここも評価をするのは難しいです。一応コンクールという基準に照らし合わせれば困ることばかりがでてきます。
ハーモニー、アンサンブル、ダイナミクス、アゴーギク、テンポをどう取るか。選曲等も考慮しなければなりません。
しかし、ここでは一つだけ書いておきますね。
楽譜に書かれていることは一度その通りに歌ってみることです。崩すのはその後だと思うのですが・・・・・・。
(すみません。これもちょっときつかったかもしれませんね。でも、自由な演奏、私はいいと思っているのですよ。本当にです。ただコンクールとなるとこれが難しいのです、その評価が。審査員泣かせの演奏ですよ。特に私のような者には)
■女声合唱団横浜アカデミー(女声13)
(金)声が全体に暗く、ハーモニーも不安定に私には聴こえました。課題曲での最後のハーモニーの響きも落ちたと思います。
講評の時にも言いましたように、ヨーロッパの宗教音楽は天上に向かっての「祈り」の響きです。
その響きは明るく、力強いものでなければならないと私は思うのですね。「祈り」はメッセージ。神に向かう心の叫びではないか、そう思って私は演奏してきました。評価の辛くなる所以です。
■かながわフリーダム・シンガーズ(男声15)
(金)緊張感のある、明るい響き。低音を十分に鳴らし、それを基盤として聴きながら整えるハーモニー。テナーの高音もよく歌えています。
自由曲ではカウンターも用い、そのまたハーモニーのバランスの良さに感心しました。輝かしく、そして力強い声、声の響きの持続性の良さ。
これは今回私が聴いた中での最も良質の響きと言っていいのではないかと思っています。
指揮者の振りと一番合っていた組み合わせでもありました。(でも私にはもう少し動きの少ない振りでも十分に団員には音楽が伝わるような気がするのですが)
■合唱団ヴォック(混声17)
(銅)男声中心ですか?(テナーですかね)女声が弱く感じましたね。ですからハーモニーのバランスも悪く聴こえました。
自由曲ではその男声中心がちょっと弱まりました。これは曲の初めが女声から始まったためでしょうか?その後の男声は抑制が働いていたと思いましたが、どうでしょう?

一般部門(Bグループ)
■小田原少年少女合唱隊(同声35)
(金)よくコントロールされた音楽ですね。ただ感心するばかり。
歌う声も抑揚に富み、「聴かせる演奏」です。音楽の流れもすっきり、フレーズの終わりもしっかりキープ。
自由曲の難しい曲も見事にコントロールしました。二群に分かれるコーラスでのハーモニーの妙味。どれも立派だと思いますね。
ただ、この少年少女たち、これからどんな歌をうたっていくのだろうか。そんなことを考えながら歌う姿を見ていました。
■コール・キリエ(混声40)
(金)これも立派な演奏なんですね。先の「小田原少年少女合唱隊」とは違った意味でですが。
演奏はアンサンブルにも気が行き届き、高音での発声に少し不安なところも聞き取れるのですが、全体には安定したものでした。しかし、その響きは私にはとても「内向き」にきこえます。つまり発展性の乏しい響きと映ってしまうのです。
宗教音楽、それは「希望」の音楽、「救い」の音楽だと私は考えています。
言葉の明瞭性も犠牲にする「この世の響き」、そして「内向きの暗い響き」を私はどうしてもこだわりをもってしまいます。
内へ内へと向かう響き、私、この響きに弱いのです。評価するのに困ってしまいました。

シード団体
■マルベリー・チェンバークワイア(混声24) 落ち着いた流れの課題曲。響きもしっとりとして安定しています。歌い出しの前に細かくえ4つ振りをした後の二拍子、これなどなかなか上手いやり方ですね。
ただ、流れといえば、最後のリタールダンドは少し持たせすぎたかもしれないと思いました。合唱の声が持たなかった、維持できなかったように私にはきこえたのですが、いかがでしょう。しかし、いわゆる「上手い演奏」です。
自由曲でのいきなりのハリのある声。これがこの合唱団の良い面なのだ、と思いながら聴きました。
しかし、その後は期待に反してあまり面白くありません。何故だろうと考えながら最後までいってしまいました。
これはやはり「響き」にあると思ったんですね。
男女のハーモニーのバランスも良し、アンサンブルとしても心得た演奏。しかし音楽が、そして響きが広がっていかない。
発展性を感じない、音楽の中に流れる「息ずく【人】としての躍動」を私は感じなかったのです。
上手い演奏ですし、期待を持たれている団だと思いました。ですから、多くの人たちに是非とも音楽の楽しさとか面白さ、すばらしさを伝える演奏をと願ってしまいます。
講評の時にも話をさせていただいたように、「合唱の響きの魅力」は自然倍音、とくに上位倍音に見る広がりの響きだと私は思っています。
「地上の響き」ではなく「宇宙に繋がる響き」を。
内向的な閉鎖性の方向ではなく、広がりを感じさせる、あるいは広がりを方向性とした流れの音楽を是非とも聴きたいものだと思ってしまいました。
それほどにこの団体の響きが、「内向的な響き」として私には聴こえたのでした。
民族性によるものかもしれません。また、私たち日本人の文化に深く根ざしての響きかもしれません。
しかし、五線に書かれた音組織の構成による「響き」は、再考され、見直されてしかるべきではないか、と私は思うようになりました。
音楽の「古くて新しい」課題、それは「響き」だと思うのですね。その「響き」の可能性を未来に生きる者として、演奏するものとして是非とも取り組んでいってもらいたいと強く私は思ったのでした。

二日間にわたって聴かせていただきました。
感想は合唱団を中心に書きました。
でも、実は指揮者についても書かなければいけないのではないかと思うのですね。
でも、これは現段階では難しく思います。(私も指揮者だからというわけでは決してありません。まだまだ指揮者の感想を述べるにしてはこの世界、時期尚早のような気がするのですね。はやく意見の交換ができるようになればいいですね〜)

勝手な感想を書きました。
皆さんの事情を深く洞察し得ない感想となってしまっているかもしれません。
もしご意見等ありましたら、ご遠慮なく私宛にMailを頂ければ嬉しいです。
返答などさせて頂ければと思っています。

Mailアドレスは
toma@collegium.or.jp
です。

No.383 '01/9/3「第二日目の神奈川県合唱コンクール」終わり