No.420 '02/3/18

かながわ第四回「ヴォーカル・アンサンブル・コンテスト」


17日(日)、神奈川県立音楽堂(木のホール)で「ヴォーカル・アンサンブル・コンテスト」がありました。
有村祐輔氏、雨森文也氏と共に3人で審査員を務めました。

最近、全国的に「ヴォーカル・アンサンブル・コンテスト」が盛んになっていますね。
私など大歓迎なのですが、今回も審査をしながらいろいろと考えさせられるところがありました。
その報告を兼ねて私の感想・意見を少し書きましょう。
これも内容から言えば「マイヌング」の分野に入るかもしれませが、<印象的>なところもありますのでこの「日記」に書きますね。

一次審査をクリアーした団体が二次審査に進みます。
10時30分から始まった一次審査が終わり、審査結果を発表したのは昼をまわっていました。
休憩を挟んで一次審査で「金」を取った団体が二次審査へ。(各部門で「金」が出なかった場合は「銀」が選ばれます)
選ばれた七団体で二次審査が行われました。
そして、総合1位、2位、3位と選んで終わったのは6時過ぎ。
総合一位になった団体が最後に「記念演奏」をしてコンクールは閉幕。
なかなか企画もよく、1日の疲れもそれほどではないと思うほどでしたね。

「絶対評価」でお願いします、ということで部門別の審査には少し戸惑いました。
<混声合唱の部><ジュニアの部><男声合唱の部><シニアの部>(これは凄かった!私は感心しました)、そして<女声合唱の部>に分かれます。この中で一番出場団体が多いのはやはり<女声合唱>、総合一位になったのもその中からでした。
ジュニアもシニアも同じ基準で審査する。
これなど、もしこの中から「総合一位」が出ればそれこそ<実力本位の、本物の>演奏だということになります。
しかし、これはいささか大変なことだと思うのですね。
選曲にもよりますが、年齢による熟し方も異なるのですから、それを同じ基準で審査するのはこちらの気持ちの負担も増すというものです。

しかし、本音を言えば私これがいいと思っているんです。(笑)
出場者の立場を思ってこの方式はマッチしていないのでは、と考えるのでしょうが、これなど私が社会に融合してきたからでしょうかね。(笑)
良いものは「良い」です。経験や性別、人数、ジャンルにこだわることなく<良いものは良い>と判断するようになればいいんですね。

音楽は<差し引いて>聴くものではない!
自分の中に<差し加えて>聴くものだと!そう思うんです。
私がジュニアでそしてシニアで「これが良い!」と思えば良い成績をつければいいんですね。
何を自分は「基準」にするか、です。
今回のシニアの中に「Silver Wings」という男性カルテットの演奏があってのですが、これなど良かったですね。
年齢の割にはという失礼な感想ではなく、音楽として立派だったと思っています。
正直「金」の評価はできませんが、今回のコンクールでの「銀」ならば、と今でも思っています。
「銀」でも二次に進めたわけですから、もう一度聴きたいと本当に思いました。

もう一つ頑張っていたグループがありました。
「Choeur Clement」、5名のアンサンブルです。
一次では身振り、手振り、そして細かいところで、発声、音楽的なことが気になって少し辛い点をつけたのですが、このグループが二次に進んでくれることを実はこっそり望んでいたんです。
幸いにして、他のお二人の先生方が良い点数を付けていただき無事二次へ。
相変わらずの身振り・手振りでしたが今度は目を閉じて聴いたので良い成績になりました。(笑)
(とにかくその身振り・手振り、各自バラバラ、また本人達は怒るかもしれませんがあまりリズミック、音楽的とも言えず困惑しました。アンサンブルでの少し気になる点も残していたのですが、一人一人の個性は光っていましたよ)
総合では4位になっていました。
混声の部では「金」が出ず(彼らは「銀」でした)、残念でしたね。
混声、しかも5名。
これからも頑張っていただきたいグループでした。

感想が長くなりそうです。
まとめましょう。
今回の「コンクール」を聴いた意見です。

聴いていて面白い演奏が少なかったですね!
皆さん、何処へ向かっていらっしゃるのでしょう。
巧い演奏、立派な演奏、偉そうな演奏(これ失礼ですかね)はあるのですが、「心」に迫ってくる演奏、感情が広がっていくような演奏がないんです。
歌っている一人一人の、作品に対する想いが伝わってくるような演奏が無いんですね。
音楽の方向は何処へと向いているのでしょう。
合唱界の中での事情も解るのですが、音楽が本来持っている「ホットな感情」(「喜び」「楽しみ」といった明るく動的なものだけでなく、「慰め」「哀しみ」といったものも含む様々な感情の表現という意味で用います)をもっと感じさせてくれる演奏を待ちたいです。

合唱は<歌う人が真っ先に楽しむ>ことができるもの。
その次に<聴いていただきたい>と思うもの。
そして<楽しんでいただきたい>と願うもの。
聴いていただき、楽しんでいただきたい人たちとはどういった対象なのか?
実は今回の「コンクール」を審査しながらずっとこのことを考えていたような気がします。

No.420 '02/3/18「かながわ第四回「ヴォーカル・アンサンブル・コンテスト」」終わり