No.425 '02/5/5

木下牧子「サンクス・コンサート」


4日、木下牧子さんの「サンクス・コンサート」を無事終えて帰ってきました。
<無事>と書くのは適切な言葉ではありませんね。しかし、内部事情がいろいろありましてその言葉を使ってしまいます。
この「日記」だけにその<事情>を大公開です。(笑)

この演奏、相当の<意気込み>だったんですよ。
何故って、CDで吹き込んでいる曲を<生>で演奏するとなると、その<生>の良さを伝えなければなりません。
CDの演奏の方が「いいな」と言われてしまうのは少し残念ですものね。<生>によって、更に、牧子さんの曲はやっぱり<良い曲>だ、と思っていただきたいですから。
<ライブ>の面白さというか、<ライブ>でしか体験できない五感での鑑賞を体験していただきたい、そういう<意気込み>が先ずありました。

そしてもう一つ。
それはソプラノの新人参加による人材育成という内部事情です。
今年のオーディションで受かった人たちの初編成でのデビュー戦だったんですね、この演奏会。
コーア・マスターの倉橋史子がセカンド・ソプラノ(女声合唱での編成ですが)にまわっての新人教育です。
ソプラノのファーストを束ねる(という言い方は余り好きではないのですが)山川美弥子をリーダーとして、今後のソプラノの可能性を探る新メンバーの人材育成を兼ねた編成替えだったんです。
これが私にとってはなかなかスリリングな音楽的運びでした。(笑)

言葉を生かす新しい響きづくりを模索しての約30年間の歩みです。
ノウハウは綿々と受け継がれてきてはいますが、やはりその重みは新人にとってみれば相当のプレッシャーです。
それを導く私のプレッシャーも相当なものとなるのですね。(笑)

結果は・・・・・・・
<先は見えた>ということでしょうか。(もちろん<明るく>ということですからね(笑))
「サンクス・コンサート」が新人達に一生忘れられないコンサートになったのではないでしょうか。
自己課題を抱えての本番です。
沢山のお客さんから心温まる拍手をいただいたことで大きな何かを掴んだことと思います。
言葉を発することの難しさ、作品の内容を自分の心と重ね合わせて伝えることの難しさを今回のコンサートを通じて<新人たち>は学んだのではないかと思っています。

男声たちは相変わらず私をホットにしてくれました。
楽しんでいるのですね、あの連中は。(笑)
真面目で、そして音楽の楽しみ方を知っている連中です。
楽屋での彼らの素行を公開したいぐらいです。(しませんけれど(笑))
あのハーモニーはそこから生まれます。
今、誇れる人たちです!(旬ですね〜)

よくお褒めの言葉を頂くアルト、一見うまくいっているようですが(笑)・・・・・・・・・・。
アルトという声部の声づくり、実は一番難しいんです。
響きの深さが求められ、それでいてクリアーな響きも要求され、音域も広く表現の幅も、リズムの取り方も責任は大きいのですね。
それをパートで合わせるのなんて、こんな難しいこと「ようやるわ」ってなもんです。(笑)
私の要求が過酷なせいか、アルトはいつも「苦難」のような顔をしています。(笑) 声の深さよりも「音楽的深さ」を要求する私です。
カウンターテナーと女声アルトが混在する特殊な編成。(しかし、これが「シュッツ・トーン」の秘訣です)
まだまだ私の理想は高く、これからもアルトは「苦難」の顔を覗かせながら(笑)、シュッツ合唱団のトーンの<要>として意気揚々と突き進んでいくことでしょう。(笑)

同じ出演者として演奏会でご一緒させていただいた、辻 秀幸さん、佐竹由美さん、ピアニストの白石光隆さんとは残念ながら余りお話しする時間もありませんでしたが、とても素敵な演奏を聴かせていただきました。ご一緒させていただけたことを嬉しく思います。

ちょっとお疲れの様子の牧子さんでした。(当たり前ですね。あれだけのことを企画され、また出演(進行と演奏)もされたのですから)
ピアノ伴奏、牧子さんらしいスピーチ、どれも素敵でした。
出演させていただけたこと、本当に感謝しています。
これからも大阪から皆で大きな声援を送り続けます。
「打ち上げ」会場でお話した、「オーケストラ付き合唱曲」をまた是非書いていただきたいな。
心から待ち望んでいます。(関西初演は我々で!一同の希望です)

No.425 '02/5/5「木下牧子「サンクス・コンサート」」終わり