No.464 '02/10/15

「ベートーヴェン」を終えて


「2番」も「7番」も躍動感溢れる曲です。
それを、楽譜指定のテンポで演奏するわけですから奏者は大変です。
テンポに関してはまだまだ疑問、異論と唱える人もいて、演奏するにはそれなりの覚悟がいるんです。
欧米諸国ではそれまでの因習にとらわれることない活発な新解釈の演奏も行われています。
主流は概してベートーヴェンが指定したとされるテンポに近づきつつあるというところでしょうか。

練習を始めた時からこのテンポに関してはあまり問題にはなりませんでした。
まぁ、私が振るということで皆は覚悟していたんでしょうね。(笑)
でも、いざやってみるとこれはテンポの問題ではないんですね。
要はリズム感なんです。
ここではこれ以上立ち入りませんが、テンポを早めたからって新しいベートーヴェン演奏にはなりません。
テンポを早めることによってリズム感も変化するということ、フレーズのつながりが変化するということなんですね。

練習の時から弦と管の混ざり具合がよかっただけに、今回の演奏にはちょっと期待をしていました。
やりましたね。
管・弦・打とのコンタクトも実にうまくとれ、オケも一つになって突き進んでいきます。
こうなればもうしめたもの(笑)、あとは音楽家たちの感性とともに少しだけ私が先導すればよいだけです。
「興奮のベートーヴェンでした」という言葉をあちらこちらから頂きました。
嬉しいですね。
「会心のベートーヴェンだったのでは」「今までで一番良かったです」という言葉も頂いたのですが、この言葉、素直に受けようと思っています。

「第7番」の演奏直前のチューニングでビオラの弦が切れました。
私は出をステージの袖で待っていたのですが、これにはちょっとびっくり。
さて、どうなるか。
待つオケはどうフォローするか。
お客さんはどう思うか。
など思いを巡らしたのですが、袖から弦を換えて出てきた奏者を(曽田くんなんですが)、オケの連中が様々な音だし(足で床を踏みならしたり、膝を叩いたり)で迎えたのですね。
後で聞いた話なのですが、お客さんの中にはこれが緊張感をほぐす「ホッとする」一瞬、「あれは良かった」という方もおられたという事でした。
緊張感でギスギスしがちな演奏直前のオケマンが見せたちょっと素敵な一瞬でした。

さて、「ベートーヴェン・シリーズ」の演奏会も終わり、私の頭はモンテヴェルディの「ヴェスプロ」が鳴り始めました。
これも素敵な曲。
「京都モンテヴェルディ合唱団」で京都で演奏、それに続いて「大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団」が東京で演奏です。
この二つの演奏会、とっても私楽しみなんです。
「マンスリー・コンサート」でも少し取り上げて解説したなぁ、なんて思ってます。

「ベートーヴェン・シリーズ」にお出で下さった多くの方々にお礼を申し上げます。
「ありがとうございました」
来年はたぶん、「第1番」「第3番」になるかと思います。(まだ決定ではないのですが)
またお聞き願えれば幸いです。

No.464 '02/10/15「「ベートーヴェン」を終えて」終わり