No.528 '03/10/15

東京都合唱コンクール〔職場部門〕〔一般部門AB〕


当日のメモをもとに各出場校の審査の感想を書きます。
皆さんが一生懸命演奏して下さった音楽を評価するという役を担ったわけです。
私がどのようにそれらを聴いたかを明らかにすることもまた必要ではないかと考えます。
私の審査基準は「メッセージ性」ということになります。
団としての個性、音楽の方向性、演奏内容の表現力等、演奏を通してどのように表現を発しているか、ということに主眼点を置きました。
「発声」に拘っているように感じられる文章もあるかもしれませんが、決して固定的に私は捉えているわけではありません。
私の提唱する発声も、様々な感情表現が可能な「発声」、メッセージとしての表現に適した「発声」、その指向の一つだと理解して頂ければ嬉しいです。
<聴きながら講評を書く>というのが苦手です。
役員の方にお願いして後ほど事務局に送らせていただくということにして頂きました。
それに先だってまず、ホームページに書くことにします。
当然のことですが、これは私の感想であって、他の審査員の方々の意見を反映させたり代弁したりすることではありませんのでくれぐれも誤解を生じませんように。
もしご意見などがありましたら私までメール(toma@collegium.or.jp)を頂ければ嬉しく思います。

東京都コンクール(職場部門)
1. 富士通川崎合唱団(混声19名)
指揮のもと一斉に<足を開いた>のには驚きました。
4位銅賞でした。私は3位をつけています。
課題曲:各パートが分離して聞こえてきます。これは多分それぞれの発声、音色が統一されていないからだと思うのですがいかがでしょう。
フレーズの終わりが下がるバス。テノールは少し弱くまた下がり気味です。ノド声、胸声の声が目立ちました。この時代の作品には不似合いですね。
女声の発声は良かったのではないでしょうか。
自由曲:おおむね出だしのハーモニーは良いのですが、フレーズの終わりがハモらないですね。テノールの音程の拙さでしょうか。またラテン語の母音に工夫がいると思いました。(紙面では詳しく書けないのが残念です)

様式観はまずまずと思ったのですが、全体にうすい感じがします。もう少しくっきりとした陰影のある演奏を望みたいと思いました。

2. 東京都庁合唱団(混声35名)
1位金賞でした。私は2位をつけています。
課題曲:暗く、重く、モノトーン的な発声にまず驚きました。(私はその逆の明るく、軽く、色彩的な発声を提唱しているからだと思います)
抑揚もあり、気持ちもある音楽的な演奏だと思うのですが、どうも私には「胸にひびく声」は辛く聞こえます。
自由曲:声が前に飛んでこないのがはがゆいですね。(これは「胸にひびく声」に原因があります)8Pから各パートのバランスが悪いとメモ書き。ノリトももう少し工夫がいるかもしれませんね。ソプラノが埋まってしまった、とのメモ書きもありました。

発声についてはここでは詳しく書けないのが残念ですが、明るい、軽い、色彩的なトーンも曲によって必要だと思います。また倍音も関係するのですが声が前に飛んでくるような発声を是非お試しになることをアドバイスさせていただきます。
音楽的な演奏だからこそ強くそう思いました。

3. リクルート混声合唱団(混声25名)
3位銅賞でした。私は4位をつけています。
課題曲:「胸にひびく声」ですね。曲頭ハモらずとメモ書き。女声と男声の声質が異なるため混ざらないと聴きました。女声の特にフォルテになった時の言葉がわかりません。声を当てるところもバラバラ。声も飛んできませんね。
自由曲:歌心はあるのですが、それが前に響きとして飛んでこないもどかしさがあります。これは一言で言って「発声」の問題ですね。女声の胸に落ちた暗い響き。
男声の胸に響く声(自由曲では少し明るくなりましたが)発声の統一も図れたらよいかとアドバイスさせていただきます。先ずは明るいトーンづくりですね。

4. 東京ガスコーラス部(混声22名)
2位銀賞でした。私は1位をつけています。
課題曲:声の響きは良かったですよ。これが私が一位をつけた理由です。ソプラノがもう少し声が飛んでくればよい、とメモ書きです。また曲の解釈でのフレーズづくりをもっと丹念に練り上げて頂きたかったですね。
自由曲:いきなり女声が出てきましたね。よく鳴っています。曲のイメージができあがっているのでしょうね。
ハーモニーのバランスもよくなりました。ソプラノ、「まいごに」のフォルテ良かったですよ。
音楽的な演奏で好感が持てました。後半女声(ソプラノ)胸に落ちる声になり不安定さを聴いてしまいましたが、これはフォルテの後だったからでしょうか。

東京都コンクール一般部門A

1.卓友会男声合唱団(22名)
7位銀賞でした。私は9位をつけています。
課題曲:バスが「胸にひびく声」、テノールが「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」、この発声の異なることが原因でハモらない、混ざらない響きとなっています。音楽作りに好感を持ちます。抑揚もあり、強弱の変化も良い、とメモ書きです。
自由曲:ドイツ語の母音の発音が気になりました。テノールが「胸にひびく声」になりはじめ、最後に完全になってしまったのは残念。3曲目に歌われた”Ruhe nun”はハーモニー、響き、音楽良かったですよ。

やはり発声が気になりました。明るい、頭声を混ぜた声作りをアドバイスさせていただきます。

2.混声合唱団ちくわ会(混声32名)
11位銅賞でした。私は8位をつけています。
課題曲:いわゆる「胸にひびく声」ですね。気持ちも込めて、端正に、そしてバランスもそんなに悪くはないのですが、今ひとつ伝わってきません。これは上のような発声のために声が前に飛んでこないのが理由だと思います。
自由曲:一曲目は言葉もハッキリ、イントネーションも悪くなく、リズミックだし、アーティキュレーションも工夫がありました。しかし、私にはハモっていないと聴きます。二曲目はリズムがわかりません。やはりハモってはいません。細かいところにまで気を配っている演奏だと思うのですが、なぜか面白くないのですね。伝わってこないもどかしさを感じたのだと思います。

3.La Primevere (女声15名)
2位金賞でした。私は4位をつけています。
課題曲:「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」の声ですね。これは良いですね。語頭が柔らかく流れ過ぎ、もっとハッキリとした言葉を聞きたいというメモ書きです。33小節のソプラノ、メゾきれいでした。44小節は浅さを感じましたが、最後は美しかったです。
自由曲:これも「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」ですね。アゴーギクも良かったですよ。少しハモリは曇ったりしましたが、これは響きの統一が図られればいいかもしれません。しかし音楽は納得できるものです。二曲目は響きの持続性が良かったと印象に残っています。リズムも良かったですね。ハモリもアンサンブルも上々のできです。選曲が良かったというのもあるかもしれませんね。

順位をつけるは難しいと思いました。皆さんの演奏とても良かったと思います。今回私は4位をつけていますが、結果として2位、とても納得いく結果です。
これからもこの美しい響きを保って音楽の深さをどんどん追求していって欲しいと強く思っています。頑張って下さい。

4.Ensemble Evergreen (混声24名)
5位金賞でした。私は3位をつけています。
課題曲:「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」ですね。良かったです。言葉が流れ過ぎ、もっとハッキリと言葉を聞きたいというメモ書きです。テンポが少し速かったかもしれませんね。最後には声も飛んできたのですが。
自由曲:もうとても面白く聴かせて頂きました。こうした選曲や姿勢に拍手です。小アンサンブル(各パート4人でしたか?)もハモっていましたし、音楽も良かったです。これからも頑張って下さい。

5.ムジーク・フロイント(混声18名)
12位でした。私は13位をつけています。
課題曲:あっさりとした演奏だっと聴いたのですが、いかがでしょう。出が揃わないのが気になりました。これはリズムの統一に問題があるように思いました。発声はいわゆる「胸にひびく声」ですね。(すこし良い意味での軽さも感じますが、もっと明るく、軽く色彩的な声作りをされてはいかがでしょうか)
自由曲:男声が5人ですか?このバランス苦労しますね。
音楽が流れすぎ、アルト弱い、声が重く、ハモらずバランスが悪い、声が飛んでこない、とメモ書きです。
しかし、なんて言って良いのでしょうか全体を聴いて印象が深いんですね。それは音楽に対する姿勢に<何か>を感じたからかもしれません。
これからも頑張って下さい。

6.男声合唱団「秀声会」(男声31名)
9位銅賞でした。私は12位をつけています。
課題曲:「胸にひびく声」ですね。フレーズごとにもっと音楽が変化しても良かったと思います。同じ音色で最後までいったと聴いたのですが、もっと内容にそくした音楽づくり音色作りを期待したいと思いました。拍の揺れもちょっと気になりましたね。
自由曲:テナーの響きに明るさも感じるのですが(これは良い方向です)、他のパートが暗く重い声。これでは音色やハーモニーの統一ははかれません。モノトーン的な声も気になるところです。

指揮者の「拍の自由さ」が気になりました。あまり過度に揺れ過ぎるのも音楽の流れを壊す要素にもなりかねません。ご一考いただければ思いました。

7.西東京女声合唱団(女声12名)
17位でした。私は17位をつけています。
課題曲:声が飛んできませんね。弱くて小さい、とメモ書きです。まとまっているのですが表現は大きい方がいいですね。ア・カペラのところでソプラノが下がりましたか。言葉をもっと鮮明にとの目的で声づくりをされることをアドバイスさせていただきます。
自由曲:やはり声作りが大切とメモ書きです。もっとダイナミックがつけられるような、大きな表現ができるような響きを聞かせて下さい。

8.EZ/Singers (混声9名)
13位でした。私は16位をつけています。
課題曲:もっと声を前に、とメモ書きです。そうすればハーモニーも良くなるだろうし、声も混ざると思ったのだと思います。
曲の終わり、アンサンブルの良さで決めたかったところですが少し表現の弱さを感じました。
自由曲:一曲目、テノールのビブラートが気になりました。曲の頭の出が揃いません。各パートの出もピッチもバラバラです。また、もっとハモらせることもできると思いました。音程や音律のことなどもう少し踏み込んで練習されることをアドバイスさせて頂きます。二曲目は声が飛んできましたね。(これは良いです)しかしフレーズの頭の出はもっと揃うはず。アルトのノド声も気になりました。最後アーメン決めたかったですね。
指揮者のいないアンサンブル。この姿勢に私大賛成です。しかし、このスタイルの良さを伝えるためにはもっとアンサンブル力を高めていかなくてはなりません。他の審査員の方の中にはとても好意的に話されていた方もいらっしゃいましたが(卓見ですね)、私はあえて厳しい姿勢で臨ませていただこうと思った次第です。もっと「出来るはずです!」っと。

9.菊華アンサンブル(女声20名)
4位金賞でした。私は1位をつけています。
課題曲:大きな声の響き、芯のある声、これにまず驚かされました。希有だと思いますね。フレージングも良く聴かせましたね。最後も決まり、印象をとても強くしました。
自由曲:良く響き、前に飛ばし、音楽作りのアゴーギクも良かったです。細かいところまで配慮された曲づくりは好感を持ちました。言葉は各パートごとに聞こえたのですが、ホモフォニック的なところになると聞こえてこないのは(不鮮明)少し気になりました。

とにかく、「響き」に圧倒された、というのが私の印象ですね。後はこの「響き」で何を「歌う」かです。より一層音楽を深められていかれますよう期待したいです。

10.合唱団 純友会(男声20名)
10位銅賞でした。私は5位をつけています。
課題曲:ダイナミックスの幅が無い、とメモ書きです。前に飛んでくる響きの広がりのことですね。やわらかい響きに好感。声質が同じ指向なのも好感を持ちました。
バスの「胸声」が聞こえてきたのは少し気になりましたし、表現の浅さも少し感じましたががその響きや音楽の方向性には期待です。
自由曲:バリトンの明るさが印象的。全体も明るくなりました。一曲目、テノールの響きが良かったです。フレーズの終わりが時折下がるのが気になりましたが、これはこれからの課題でしょう。二曲目、テノール良かったです。ピアノと合唱のバランスも良かったのではないでしょうか。リズムが合わない箇所がありましたか?全体に流れるリズムのノリが大切ですね。

より大きく、強く、そして広がっていく声作りをとアドバイスさせていただきます。男声の響きはもっと剛柔が自由で、そしてダイナミックスに関しても可能性はいろいろあると思っています。期待しています。

11.K.M.T.Boys (男声11名)
18位でした。私も18位をつけています。
課題曲:まず、発声がまだまだ出来ていないですね。音程づくりもアンサンブル力もこれからだと思います。
自由曲:最初のフォルテはなかなかの気合いでした。良かったのですが、後はやはり発声の問題ですね。音楽作りもこれからだと思います。頑張って下さい!

12.江戸川女子中学・高等学校音楽部(女声11名)
14位でした。私は11位をつけています。
課題曲:好感の持てる演奏でした。指揮者の方の音楽性が良いですね。ハーモニーも良かったです。アルト特に良いと聴きました。今後の課題としてはラテン語の発音でしょうか。アクセントについても考慮した響き、声の飛ばし方を勉強されたらよいと思いました。最後はハモりませんでしたね。これはソプラノが下がったと聴いたのですが。
自由曲:これも好感の持てる演奏でした。そして指揮も良かったです。声に伸びがある、これは指揮とも関連していますね。ソプラノがノド声になっていったのは今後の課題でしょう。これからは顔の表情も豊かになるといいと思いました。

これからを期待しています。他の先生方も印象を強く持たれたみたいですよ。

13.合唱団お江戸コラリアーず(男声28名)
8位銀賞でした。私は6位をつけています。
課題曲:発声の統一を、とメモ書きです。それと楽譜にもう少し準拠した演奏がいいと思うのですがいかがでしょう?テンポ、アゴーギクに違和感を持ちました。
自由曲:もっと明るい響きがいいですね。各パートのバランスは良いのですが声が前に飛んできません。ちょっと苛立ちを覚えました。また、全体的な釣り合いでバスの低音域が響けばいいですね。(なかなか難しいことですが)

14.Tokyo La vie en Choeru (女声19名)
6位銀賞でした。私は7位をつけています。
課題曲:「胸にひびく声」ですね。被さる声と聞きました。抜けが悪いのですね。フレーズの終わりももう少しハモらせてもらいたかったと思いました。ソプラノの息漏れが気になったのですがどうでしょうか?曲のまとめは良かったと思ったのですが、この当たりから音程の取り方が気になってきたことを思い出します。
自由曲:前半、半音の幅が広くありませんか?ちょっと気になりました。
声のまろやかさが聞こえてくるのですが、拮抗する響きはもっとハッキリとしたものであってもよいかと思います。
全体的に重たい、暗い、平面的な印象を持ちました。もっと立体的な演奏のアプローチも試みられることをおすすめします。

15.はるか(女声17名)
3位金賞でした。私は10位をつけています。
課題曲:声が飛んでこない・フォルテもダイナミックスの幅が無いと聴いてしまいました。何故か全体に弱い、小さいと私には感じられました。それが解釈だったのでしょうか?
自由曲:声が大きくなりましたね。また飛んでもきます。驚きました。課題曲との差がなんとも不思議です。
演奏は良かったと思います。作品にそった演奏だったと聞きました。しかし、ずっとこの<差>(音楽的なことも含みます)のことが気になって私には冷静な聴き方ができなかったかもしれません。
その<差>は私にとっての大きな出来事でした。評価をずっと考えて引きずっていたのを今思い出しています。

16.Chorus EVM (女声17名)
16位でした。私は14位をつけています。
課題曲:ソプラノ高音が被りますね。伸びがないのが聴いていて苦しいです。メロディーの歌い方に線的な要素をもっと加えられるといいと思います。
自由曲:うまくまとめられたとは思うのですが、デュナーミクに幅がない、音楽が単調になってしまうといったことを感じてしまいました。将来性はあると判断します。是非これからも頑張って下さい。

17.エオリアン・コール(混声20名)
15位でした。私も15位をつけています。
課題曲:発声を整えられることをアドバイスさせていただきます。声が揺れてますね。男声はこれからです。女声も弱いです。
ハーモニーも少しづつ聴き合って、感じ合って音楽作りをしていってください。
自由曲:全体的に弱いですね。小さい声だと言っていいのでしょうか。やはり発声ですね。
音楽的にも弱い感じがしましたが、まずは声作りからですね。頑張って下さい。

18.混声合唱団 鈴優会(混声17名)
1位金賞でした。私は2位をつけています。 課題曲:少し被った声が気になるところもありましたが、演奏は良かったですね。
また声がもう少し前に飛んでくればいいのにと思うところもありましたが、”mane”などちょっと涙ものでした。(ホントです)
後半のvocemにつけられた音型も見事な歌い方でしたよ。そして後半のet videboは決めましたね。見事な演奏でした。
自由曲:千原さんの曲ですね。これも良かったです。皆さんが作ったハーモニーに涙してしまいました。曲への共感というものあるでしょう。各パートのバランスが良いということもあるでしょう。しかし、それ以上に皆さんが作り出すハーモニーの中に、聴き合う、信頼し合う、心を通わせるという要素を私は聴いたのだと思います。
私は2位を結果的につけてしまいましたが、堂々の金です。おめでとうございます。
私の2位をつけた理由は二つです。一つは声量です。もう少し客席へと飛んでくる声作り、力強くて芯のある声作りですね。
そしてもう一つは明るい声作りです。これによって色彩的な声、響きの広がりが生まれると思います。ぜひ今後の課題としてください。コンクールで<泣く>というのはそうあるものではありません。良い演奏を聴かせてくれました。本当に良かったです。

東京都コンクール一般部門B

1.CANTUS ANIMAE (混声35名)
2位銀賞でした。私は3位をつけています。
課題曲:言葉もよくわかり、ハモりも良いでしょう。そして各パートのバランスも整っています。しかし、音楽づくりにいつも思うことなのですがアゴーギクの付け方に若干の違和感を持ちます。評が分かれるところだと思いますね。
自由曲:子音の処理の仕方に工夫があり言葉は生きようとしています。しかし結果として「巧さ」が強調されてしまうように聴き取ってしまいます。ちょっときつく書いてしまうかもしれませんが、私には「独りよがり」と思われるギリギリの表現法ではないかと思うのですね。内容が決して無いわけではありません、しかしその表現法によって曲の内容がこちら側にストレートに飛んでこないのを感じます。演奏とは演奏者としてのフィルターを通すことになるのですが、そのフィルターがもう少し作品本来の色を残すものとして、あるいは本来の姿も見せる、そういったものであって欲しいと私は願っているのかもしれません。

2.創価学会しなの合唱団(男声77名)
5位銅賞でした。私も5位をつけています。
課題曲:声の伸ばしにピッチの揺れを感じました。声の量はあるのですが、被さった声で前に飛んできません。一丸となった音楽なのですがそれが声に天井が出来ているものですから表現法としての歯がゆさを感じました。
自由曲:そしてやはりというか、この発声ではラテン語は判りません。皮肉なことに日本語になったとたんよく聞こえてきました。この現象は「胸にひびく声」の特徴をよくあらわしています。私には曲の感情や構成が聞こえてくるのではなく、声のかたまり、音のかたまりとして聞こえてきたのが辛かったです。

3.大久保混声合唱団(混声69名)
1位金賞でした。私も1位をつけています。
課題曲:いわゆる「胸にひびく声」の発声。私の提唱している響きではないのですが、その音楽には納得させられました。楽譜に忠実になろうとする姿勢を感じます。アゴーギクも中庸で適切だと感じました。作品と対峙する真摯な姿勢の音楽として納得させられたということでしょうか。
自由曲:音の細かい動きのなかでは言葉はハッキリとしませんね。これは発声にも原因があると思います。最初の拍子木は少し強かったですね。(些細なことですが)
ソロは良かったですね、しかし全体になると重く、暗く、モノトーンの響きです。もっと色彩的な響きがあればもっとこの作品が輝くだろうと思いながら聴きました。この作品を演奏する意欲をかって私は一位をつけたと思います。

4.合唱団ひぐらし(混声40)
4位銅賞でした。私も4位をつけています。
課題曲:「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」の響きです。良いですね。前で演奏した団体と比べるのは良くないのですが、審査しているとどうしてもそのことにも影響されます。課題曲の<さらっと>さが一段と強調されてしまいました。味付けがとても薄く聞こえてしまったのですね。これは些細なことかもしれませんが49小節アウフタクトの入りは遅かったですか。流れが不自然に聞こえました。
自由曲:明るい響きに好感を持ちます。(これを維持し続けて欲しいと願っています)音楽的にはもっと細かなところまで神経を行き届かせて欲しいと思いました。
どうしても団子状態を聴いてしまいます。ハーモニーづくり、各パートのバランス、アタック、イントネーション、アーティキュレーションを整えることをアドバイスさせていただきます。こういったことは六声といった多声部になったときにその効果を最も発揮することになると思います。これからも頑張ってくださいね。

5.舫の会女声合唱団(女声72名)
3位銅賞でした。私は2位をつけています。
課題曲:「胸にひびく声」の発声ですね。私の提唱する発声とはまさに対極なのですが音楽の流れは納得です。しかし、もっと色彩的で前に飛んでくる広がりのある声での表現を聴いてみたいと思いました。私にはこの響きは重く、辛く聞こえてしまうのですね。
自由曲:早いテンポの曲ではこの響きでは言葉が聞こえてきません。言葉の明瞭さ、それが課題だと思うのですがいかがでしょう。良くまとめられた音楽として今回評価させていただきました。



No.528 '03/10/15「東京都合唱コンクール〔職場部門〕〔一般部門AB〕」終わり