No.529 '03/10/15

東京都合唱コンクール〔高校部門AB〕〔大学部門AB〕


当日のメモをもとに各出場校の審査の感想を書きます。
皆さんが一生懸命演奏して下さった音楽を評価するという役を担ったわけです。
私がどのようにそれらを聴いたかを明らかにすることもまた必要ではないかと考えます。
私の審査基準は「メッセージ性」ということになります。
団としての個性、音楽の方向性、演奏内容の表現力等、演奏を通してどのように表現を発しているか、ということに主眼点を置きました。
「発声」に拘っているように感じられる文章もあるかもしれませんが、決して固定的に私は捉えているわけではありません。
私の提唱する発声も、様々な感情表現が可能な「発声」、メッセージとしての表現に適した「発声」、その指向の一つだと理解して頂ければ嬉しいです。
<聴きながら講評を書く>というのが苦手です。
役員の方にお願いして後ほど事務局に送らせていただくということにして頂きました。
それに先だってまず、ホームページに書くことにします。
当然のことですが、これは私の感想であって、他の審査員の方々の意見を反映させたり代弁したりすることではありませんのでくれぐれも誤解を生じませんように。
もしご意見などがありましたら私までメール(toma@collegium.or.jp)を頂ければ嬉しく思います。

東京都コンクール高校部門A
1.共立女子高等学校音楽部(女声19名)
4位銀賞でした。私は2位をつけています。
課題曲:ソプラノ「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」の発声ですね。それも声の当たりが目から額ですね、これは良かったです。アルトは落ちていましたね。メゾももう少し上で響いたら良かったかもしれません。音楽づくりは繊細さを感じます。全体として個性的な響と聴きました。(良い意味です)
自由曲:八声ですね。全体に発声がよくなりました。ラテン語のアクセントと母音の音色の関係をこれから追求することをアドバイスさせていただきます。もう少しリラックスして音楽をオープンとした表現を望みたいと思いますが、バランスといい、ハーモニーといい音楽の運びも流れも私は十分に納得できるものでした。これからも頑張ってください。

2.豊島岡女子学園高等学校コーラス部(女声24名)
5位銅賞でした。私は8位をつけています。
課題曲:押したソプラノiの母音が気になりました。そして高音が少し落ちますね。メゾが少し低く感じました。それからメゾとアルトの音程が不安定です。声のチェンジの克服ですね。ということで後半ハモらなくなりました。
自由曲:始まりの言葉が聞こえてきません。各声部のバランスを工夫されたらもう少し言葉は聞こえてくると思いますね。とにかく言葉を聞かせてほしい、飛ばして欲しいと思いました。発止とした自己表現が望みです。フォルティシモは良いのですが、その他のニュアンスも大切に、というメモ書きもありました。

3.国立音楽大学附属音楽高等学校合唱部(女声32名)
3位銀賞でした。私は4位をつけています。
課題曲:声が明るくなっているのではないかと思いました。しかし、ソプラノの被さった声が気になります。またfisが開きませんね。音楽的には聴かせられる演奏でした。ですから発声がとても私にとっては気になるのですね。アーティキュレーションもフレージングも良く、最後のクレッシェンドは声の持続性もあって良かったです。
自由曲:良いテンポですね。51小節綺麗でした。演奏は聴かせました。しかし、ピアノとのバランスがとても私は気になったのですね。ピアノとのバランスは大切です。ちょっとこのことで私は点を辛くつけたのかもしれませんが、私にとっては重要なことでしたし、皆さんには是非素晴らしい演奏をと私は望んでいるのだと思います。(辛くてスミマセン)

4.共立女子第二高等学校コーラス部(女声15名)
6位銅賞でした。私は1位をつけています。
課題曲:メゾが弱いと聴いてしまいました。(多分ソプラノが強すぎるのかもしれませんね)でも音楽の様式がしっかりしているものですから安心して、そして充実した演奏として私は聴きました。ハーモニーもいいですね。
自由曲:美しいハーモニーでした。音楽の流れもよく、ラテン語の発音も抑揚もいいですね。43小節から47小節が不安定だったのが気になりました。また最後のアーメンももう少し広がりのある響を聴きたかったですね。それまではとても良い響だったのですから。音楽のまとめが良いですね。高校生らしい演奏として私は躊躇なく1位をつけました。

5.玉川学園高等学校合唱部(混声22名)
8位でした。私は9位をつけています。
課題曲:女声「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」です。しかし男声は「胸声」です。
テノールの声の詰まるのが気になりますね。これは「ノド声」ということになります。またリズムもそろいませんでした。縦の線を揃えることも大切ですね。
自由曲:女声が男声に影響を受けたのでしょうか、響が落ちました。そのため声が混ざりません。所々で綺麗なハーモニーも聞こえてくるのですが、それが安定しないところがつらいですね。また音楽の作りももう少し細かいところまで神経を注いでいただきたいと思ってしまいました。

6.東京女子学院高等学校合唱部(女声15名)
2位金賞でした。私は3位をつけています。
課題曲:「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」の発声です。これは良いですね。つぶが揃っているというか、バランスが良いです。そしてソプラノの伸びやかな響が印象深かったです。音楽の流れも解釈も納得いくものでした。
自由曲:下の声が響けばいいですね。少し弱いと聴きました。最初の曲は下声部が大事です。そして巧い演奏として聴くのですがもっと内容が、言葉の背景を聴きたいと思ってしまいました。二曲目の始めは美しいハーモニーでしたね。各声部のバランスが良いのですね。ソプラノが上手いと思いました。この曲では言葉がよく聴き取れたと思います。きっと内容にふさわしい発声だったのだと思われます。

7.東海大学菅生高等学校(混声12名)
11位でした。10私は位をつけています。
課題曲:英語の発音の流れが不自然に聞こえたのですが、どうでしょう。ときおりバスが下がるのが目立ちました。男声がハモらないというのはつらいですね。最後も決まりませんでした。
自由曲:バスの響が落ち、下がりますね。ソプラノも押した響で重たいと感じました。とにかくハモらないと聴いてしまいました。これは発声の問題だと思います。
二曲目、少人数の演奏では少し無理があるかもしれません。テノールがノド声というのも気になるところです。とにかく統一のとれた発声を望みたいとのメモ書きです。

8.大妻高等学校コーラス部(女声18名)
9位でした。私は11位をつけています。
課題曲:テノールのリズムが流れています。繊細さも欲しいと感じました。ソプラノFが下がります。(声のチェンジの場所ですから当然かもしれないのですが)メゾが「胸に響く声」です。これではハモりません。
もう少し音楽の内容も聴きたいとメモ書きです。
自由曲:音楽がせわしなく走りますね。下の音域ではノド声ですね。これではハモりません。もっと細かい指示と練習を、とメモ書きです。拍が流れます。相変わらずせわしなく音楽が進みます。これでは音楽になりにくいですね。一音一音響かせながら丹念な音楽作りを目指していっていただきたいと思いました。

9.東京成徳大学高等学校(混声13名)
12位でした。私も12位をつけています。
課題曲:ソプラノの高音がつまる、ピッチが定まらない、音楽が小さいと、メモ書きです。発声の統一が必要だと感じました。
自由曲:ソプラノが弱いのか、ピアノが強いのか?ソプラノが埋もれてしまったのではないでしょうか。時折ハーモニーの響きが安定しませんね。ムラがあるということですね。やはりソプラノの発声が気になりました。
二曲目はモワッと入ってきましたね。縦を揃える、息を揃える、イントネーションを揃えることは大事です。
言葉が聞こえてこない、アルトがノド声とメモ書きされています。発声を揃えることをまずされることをアドバイスさせていただきます。

10.富士見丘高等学校合唱部(女声12名)
10位でした。私は6位をつけています。
課題曲:アルトが弱い、とメモ書きです。しかし思い出すのですが全体も弱かったように思いました。声を飛ばし、言葉を飛ばさないと合唱は始まらないと思いますね。
自由曲:忙しく六つ振りでした。この曲なかなか難しいリズムです。フレージングも長いですね。メロディーを歌わせるにはちょっとしたテクニックが必要です。発声の統一、そして声を飛ばすことから勉強されたらよいかとアドバイスさせていただきます。

11.杉並学院高等学校合唱部(女声32名)
1位金賞でした。私は5位をつけています。
課題曲:少し高音がつまった声になりますが「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」の発声ですね。これは良いです。各パートが統一された響きで好感を持ちました。メゾがいいですね。縁の下の力持ちを十分に果たしていたと思います。
自由曲:ハモっているし、ダイナミックスもあるのですが私には言葉が聞こえませんでした。平坦で平板と聞こえてしまうのですね。言葉の処理は難しいです。遠近法的な立体感のある音響、色彩的な演奏を試みられることをアドバイスさせて頂きます。これからは言葉の飛ばし方の工夫が課題かもしれません。。これからも頑張って下さい。

12.玉川学園高等部女声合唱団(女声25名)
8位でした。私は9位をつけています。
課題曲:ソプラノの押した声が気になりました。バランスが悪いかもしれませんね。ソプラノの印象が強いです。また音程の拙さも目立っていたと聴きました。音程とか、音律とかも一度検討されることをおすすめします。最後がハモらなかったのも残念ですね。
自由曲:はじめのユニゾン、声は軽く、そして抜けも良かったです。低声部では落ちた声も聴きましたね。全体に胸声になりがちの発声です。軽く、明るい「頭声」を意識した発声をおすすめします。また、全体に音楽が薄いとの印象です。もう少し色濃く演奏することも考えられてはいかがでしょう。表現はハッキリとしたほうがいいですね。

東京都コンクール高校部門B

1.東京都立府中西高等学校合唱部(混声71名)
3位銀賞でした。私も3位をつけています。
課題曲:「胸声」の発声ですね。重く、暗く、低い響きとなります。これでは声も飛びませんし、音色の変化も乏しくなります。フレージングの良さは聞こえたのですが、この響きでは音楽の表現に幅を感じず言葉も飛んできませんからどうしても平坦な音楽となってしまいます。
自由曲:よく揃った音楽となっていました。しかしこの響き、重く、押しの強いもので私には少し辛く聞こえてしまいました。また声量もたっぷりあるのですが、この響きを強くすればするほど私の耳から音楽が遠のいてしまうのですね。明暗の変化もあり、明るく声が良く飛び、広がってくる遠近法的な立体感のある音楽を聴かせて頂ければと思いました。

2.大妻中野高等学校合唱部(女声57名)
2位金賞でした。私も2位をつけています。
課題曲:「胸声」の発声ですね。重く、暗く、低い響きです。これでは声も飛びませんし、音色の変化も乏しくなります。
大人数をいかしたダイナミックスでしたね。しかし私はこの響きでは少し辛いと聴いてしまいます。言葉は大切にしています、また繊細さも感じます。しかしこの響きでは音楽が平坦、平板に聞こえてしまうのですね。明るく、軽く、色彩的な声づくりをアドバイスさせていただきます。
自由曲:「おじょうひん」「おすわり」が聞こえてきませんでした。これは各声部のバランスの問題ですね。二曲目、音もよく揃い、アンサンブルも整い、強弱もつけていて好感を持ちました。言葉も聞こえてきましたよ。ただ、発声の問題だけは気になり続けています。

3.実践学園高等学校合唱部(混声36名)
4位銅賞でした。私も4位をつけています。
課題曲:「胸声」の発声ですね。重く、暗く、低い響きです。これでは声も飛びませんし、音色の変化も乏しくなります。含み声の響きです。また天井のある発声(声が抜けないという意味で私は使います)。よく訓練された合唱と聞くのですが、母音の同質性によって音楽が平板に聞こえてきました。
もっと言葉に、そして音楽に起伏と色がある流れを聴きたいと思いました。
自由曲:男声の「胸声」(ノド声)の強さの中では女声は聞こえてきませんね。また響きは暗く、またハモっていないと聴きました。発声を整えることをアドバイスさせていただきます。

4.早稲田大学高等学院グリークラブ(男声42名)
1位銅賞でした。私も1位をつけています。
課題曲:「胸声」の発声ですね。重く、暗く、低い響きです。
明るく、軽く、色彩的な声を提唱している私としては少し辛く聴いてしまいました。これでは声の飛びも、広がりも声色も少なくなるのですね。しかし音楽は抑揚もタップリあり、アンサンブルも整えられ、よく訓練されていると思いました。
自由曲:いきなり足踏みですね。また様々なかけ声も効果的です。しかしその中で言葉になったとき迫力(響き)が無くなったのには正直驚いた、とメモ書きです。
全体の印象としては発止として男性的、そしてよく訓練された合唱としても好感を持つのですが、この逆転は私には辛いですね。言葉も大切にということでしょうか。

東京都コンクール大学部門A

1.大東文化大学混声合唱団(混声20名)
4位でした。私も4位をつけています。
課題曲:テノール響きが被さって聞こえてきました。声は前に飛ばしてこそ表現の担い手となります。ソプラノが弱いですね。また飛んできません。各フレーズの音楽的意味をもう少し練って頂いて、解釈としての音楽をより突っ込んだものとして聴きたいと思いました。縦の線も整いませんでしたね。
自由曲:弱々しい出だと聴きました。ピアニシモの発声は難しいのですが弱々しく聞こえてはならないと私は思います。またフォルテでは声は大きくなるのですが、被さった声では表現力は小さいですね。
二曲目、リズムが合わないと聴きました。ちょっと格好だけかな(失礼!)と、メモ書きです。

2.立正大学グリークラブ(混声32名)
1位金賞でした。私も1位をつけています。
課題曲:全体の響きは「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」だと聴きました。良かったです。(バス(バリトン?)はノド声ですね。気になりました)よく動く指揮者さんでしたね。一生懸命です。(悪いといってるわけではありません、念のため) 「こうしたい」とハッキリ示す分には良いのですが、余分な動きは音楽的な要素を崩す場合もあると思いますので気をつけたいと思いました。
自由曲:よく練習している演奏と聴きました。しかし音楽的にはもう少し踏み込んだ表現が可能だったと思います。奥行きのある表現や、フレーズごとに変化する音楽を聴きたいと思いました。音楽的には少し物足りなさを感じましたね。ちょっと気になったのですがAmenの発音、「あんめん」と聞こえたのですが、これは意図的ですか?

3.東京家政大学フラウエンコール(女声22名)
2位銀賞でした。私は3位をつけています。
課題曲:まだまだ「胸にひびく声」ですね。いわゆる「胸声」の発声です。重く、暗く、低い響きが基調です。これでは声も飛びませんし、音色の変化も乏しくなります。もう少し頭声を意識した響きづくりをアドバイスさせて頂きます。音程が不安定、ピッチも正確でないと聴きました。ハモリももう一つ、これはソプラノの天井のある被さった声に原因があるかもしれません。
自由曲:なかなか整った良い音楽の流れだと思うのですが、各フレーズがもっと性格的であって欲しいと思いました。声の色彩的な変化を望んだのだと思います。


4.創価大学銀嶺合唱団(混声29名)
3位銅賞でした。私は2位をつけています。
課題曲:「胸にひびく声」の発声ですね。重く、暗く、低い響きです。これでは声も飛びませんし、広がりません。また音色の変化も乏しくなります。ソプラノの高音が響きませんね。天井のある発声(声が抜けないという意味で私は使います)です。明るく、軽く、色彩的な声を提唱している私としては少し辛く聴いてしまいました。
自由曲:様式観は踏まえていると聴きましたが、暗いマドリガーレですね。明るくしようとする意志も垣間見られたのですが、最後はやはり暗い響きとして落ちてしまったと聴いたのですがいかがでしょう。もう少しマドリガルは明るい発声を基調とした方がいいと思います。ご検討を。

5.早稲田大学コール・フリューゲル(シード合唱団)
課題曲:「胸にひびく声」の発声ですね。重く、暗く、低い響きとなって落ちます。これでは声も飛びませんし、広がりません。また音色の変化も乏しくなります。明るく、軽く、色彩的な声を提唱している私としては少し辛く聴いてしまいました。ちょっと様式観が異なるように感じました。Dの部分がもっと響けば、Hがハモっていない、最後もハモらなかったとメモ書きです。
自由曲:テノールの声の抜けが悪いのが気になりました。ピアノが入ってきて色彩的になったと感じたのですが、それは合唱の響きだけではモノトーンだったということですね。ア・カペラでも色を感じる演奏を期待します。(発声の問題ですね)音楽の流れは良かったです。ピアノの演奏巧いと思いました。


東京都コンクール大学部門大学部門B

1.東京工業大学混声合唱団コール・クライネス(混声141名)
課題曲:「胸にひびく声」の発声ですね。重く、暗く、低い響きです。これでは声も飛びませんし、広がりません。また音色の変化も乏しくなります。この響きのフォルテは私、とても辛く聞こえてしまいます。メゾピアノぐらいの声量はまだましなのですがフォルテでは重すぎます。大事な言葉がこちらに伝わりません、飛んでこないのですね。
自由曲:二重コーラスですね。言葉は判るのですが、私にはリアリティーのある響きとしては伝わってこないのを歯がゆく感じます。もっと明るい声で聴いてみたいと思いました。ハモっていないと聴きました。ピアノが入ってきたときの異質な感じは印象深く残っています。「力」でなく「色彩」「ハート」で、とメモ書きです。



No.529 '03/10/15「東京都合唱コンクール〔高校部門AB〕〔大学部門AB〕」終わり