No.14 2020/05/02

【指揮者としての心得】


最初にして最後にしたいと思っている「指揮法講座」が「新型コロナウィルス」対応のため〈延期〉としました。
現況では開催は決められず、少し間が開いてしまうかもしれません。残念です。
しかし、これまでの経験によって知り得た技法、指揮とは何であるか?など、伝えたい気持ちがずっとあっての開講動機。
是非ともその機会をつくりたいと思っています。
ここからはその「指揮法講座」の副読本としての内容にしたいと思って書きます。参考にして頂ければ幸いです。

指揮法とは「教えられるものではない」、そう先人たちが言っていたことを私は深く刻み込んでいます。
その通りだと思うからです。
確かに世界に共通した、つまり伝達法の共通項はあります。拍子を示す形であるとか、表現に関する強弱、リズム感などは等しく学ぶべき技法です。
しかし、それを演奏者に示すだけでは「指揮者」としてはまだ完成されたとは言えません。
そこからが実は「指揮者」としての仕事です。
そして「職業としての仕事」とするには、そこに何らかの〈指揮者としての魅力〉がなければなりません。
その魅力づくりが、真の「指揮法」ということになります。
だからこそ、結論的に言えば「指揮とは教えられるものではない」、「自身が魅力づくりをする」となるわけです。
その達成には、あらゆる事を真摯に学び、人間としての深みといったものと結び付いた身体の動き、思考による表現法とならなくてはならない、そう思っています。
一人、一人〈違って良い!〉、〈違わなくてはならない!〉ということです。
技法が人の心を動かすのではありません。人としての心の有り様が人の心をゆり動かすのです。
「揺り動かす」、それが音楽の底にある魅力です。揺り動かさなくては感動と結び付きません。
魅力に乏しい、となるのです。

〔実践での心得〕

拍子の図形はしっかりと頭に刻み込んでいなければなりません。
腕の動きとしては右手で振る場合、左下への動きが難しいです。私も苦手かもしれません。
縦の振り、そして右下、右上、右横への動きはスムーズです。
四拍子でいえば、1拍目と4拍目(上下に向かっての動き、右横から右斜め上下へ)は振りやすい。
2拍目と3拍目は振りにくい。特に2拍目に向かう動き(体の中心辺りから左への動き)が鈍くなりがち。
3拍目の振りは体の左側から右への動きは少し難しいですが、体の中心辺りから右側への振りは容易い。如何でしょう?
特に大事な動き。指揮法の鍵となる動き、それは上方向への動きです。
実は指揮法の中でこの上への方向が一番大切な要項といってよいでしょう。
縦方向も大切ですが、このUpする動きこそ指揮者としての資質、実力を表すことになります。
〈流れる歌心〉はこのUpの動きにかかっています。技法を磨くとは〈Up運動を制御〉する、コントロール出来るか否か、ということになります。
これらの事を踏まえて、文章に表せる範囲で書いていこうと思います。
記述のみで指揮法(発声法)など伝えられるものではありません。
実際に指揮を見聞きし(発声をその場で聴き)、音楽が変化する中でその技術を体得していかなくてはならないものなのです。
では、そういった制約があるということを前提にして、改めて「指揮」に関する記事を書き続けることにします。

No.14 2020/05/02「指揮者としの心得」この項終わり