第14回

音の不思議(1.基礎編)

これから何回かに分けて「音」についての話をしましょう。
あまりにも身近すぎて意識する事がなくなっているような気がするのですが、「音」に関してはまだまだ解らないことが多いのです。
歌をうたったり楽器を演奏することは、無意識(経験的)に「音響学」や「音響工学」の世界に足を踏み入れていることになっているのですが、皆さんは意識したことあります?

さて、人間には5つの感覚が備わっていることはご存じですね。
<視覚><味覚><嗅(きゅう)覚><触覚>そして<聴覚>の五感です。
この中で<聴覚>だけが幸か不幸か他のものに比べて、働き者で酷使されている器官です。
私たちは錯覚をしているかもしれませんが、「目」による<視覚>より「耳」から入る情報量の方が比べものにならないくらい多いのです。
<視覚><味覚><嗅(きゅう)覚><触覚>という感覚は目をそらしたり、口にしなかったり、鼻をつまんだり、触れないようにすれば済むのですが、音に関してはそういうわけにはいきません。
最近私は市販されている耳栓を使うことがよくあるのですが、この時など耳がいかに普段大切な情報を与えてくれているかが解って驚きです。
「音」は人間が生活していく上で最も大事な感覚なのですね。

この項の目的は演奏に際しての「音」のコントロールにあります。
音の特性を知ることで演奏の効果を上げることが出来ます。言い換えれば、音の特徴が解らなければどんな名演奏をしても無駄な骨折り損となってしまうことがあるということですね。
それでは「音」について一緒に考えていきましょう。

最初は基礎の基礎。「音とは何か?」について。
「音」は空気の波運動ですね。残念ながら目にすることはできないのですが、空気が波打つ現象です。
しかし間違いませんように!この波運動は「風」のような<気流>運動ではありません。音は<圧力変動>による流れです!
押しくらまんじゅうのように、人が押されて<圧力が高い>状態の時と、押す準備の<圧力が低い>状態の交互運動です。
「音声」も声帯の振動が空気の<圧力変動>を生み出すことによって生じたものだということをしっかりと把握しておきましょう。
そしてもう一つ大事なこと。
波が伝わる速さ、<音速>です。
音は一秒間に340メートル走ります。
そしてこの速さに影響を与えるのが、気温です。
気温が上昇すると<音速>は速くなります。一度上昇するごとに0.6メートルだけ速くなります。
気温が低いと空気の動きが鈍くなって音速が遅くなるのです。

さあ、「音」の旅が始まります。
次回は「高い音」と「低い音」についてです。


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