第139回('12/04/15)

【転載】「京都C・モンテヴェルディ合唱団」第48回定期演奏会「演奏にあたって」

「京都C・モンテヴェルディ合唱団」第48回定期演奏会
2012/04/15[日]17:30 開演
京都府立府民ホール「ALTI」

演奏にあたって

ハーモニーの美しさだけではなく人間の心模様の表現を目指して合唱作りをおこなってきました。
人間臭さと透明で純粋な響きとは相容れない要素かもしれないのですが、
それでも人間の理想を追い求めたいとの願いが強いアプローチかも知れませ ん。
「本質」を探りたい、求めながら未来を探りたい、これが私の《本質》です。

第一ステージで演奏するモンテヴェルディのマドリガルは正直演奏するのも鑑賞するのも難しい。
彼が表現しようとした新しい音楽スタイル(劇的ハーモニー)をイタリア語の中で体感しつつ、恋の駆け引きや愛の謳歌を歌い味わう。
それも1600 年代の歴史に遡っての感覚で。
しかし、歌うほどに日本人の心とも通い始める共通な感覚もあるとの確信です。
モンテヴェルディの大胆さと敬虔で慎ましやかな精神はとても魅力的。
これは我々日本人にも解る!というわけです。

第二ステージのウィリアム・バード。
私は常にイギリス演奏様式に惹かれていることを告白しなければなりません。
ドイツ音楽を基に培ってきた音楽観 ではありますが、演奏の仕方、特に合唱や声楽アンサンブルにおける演奏に聞き耳を立てます。
今回選んだ「5声のミサ曲」もこよなく愛する曲です。
静けさの中に宗教的情熱が迸ります。
特に最終楽章のアニュス・デイの深い想いは、私の心と共振する親しい寄り添い音楽として大切にしたいと思う曲 です。

第三ステージ。久しぶりに木下牧子さんの「光る刻」を選びました。
牧子さんの作品はいつ演奏しても心に新鮮さと音楽的刺激とを与えてくれます。
ま だ私も木下作品をそう多く取り上げていない頃にこの作品と出会いました。
大胆な和声とリズムに驚いたことを思い出します。
その驚きは深く私の心を 捉えて、この作曲家が並々ならぬ器なのだと知って私の脳裏に強く刻み込まれました。
この曲、正に日本合唱史における歌い継がれるべき「名曲」の 一つだと思います。

最終ステージ。最近この曲を取り上げることが多くなっています。この曲、私と千原さんとを更に強く結び付けた記念すべき宮沢賢治作品の第一作でし た。
きっかけは旅先、諏訪湖畔の温泉宿。二人の会話の中で賢治の詩に話が及び、それがきっかけで産み出された曲です。
それ以後も氏との多くの作品と出 会いがありましたが、その協同プロジェクトの中でも私にとってはとても大切な作品となりました。
「応援歌」として千原さんは「雨ニモマケズ」を書きます。
それが今日、大震災、および大津波で被災された多くの方々への強いメッセージとして広く 歌われている所以でしょう。
賢治の郷里への慈しみ、そして被害に苦しんでいた農民への彼の温かい眼差しと自身の苦悩。
それらの結晶が私たちに強い希望のメッセージとなって今 日に響き渡ります。
千原英喜の「雨ニモマケズ」はもう日本における幾多の「応援歌」の中でも揺るぎない「私たちの応援歌」になりました。
改めて全ての被災者の皆様に未来への希望を切に祈って、心一杯歌いたいと思います。

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